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アンニーバレ・カラッチ『ヴィーナスとアドニス』
記事URL  カテゴリ | ギリシア神話絵画 | 2011年03月31日(木)13時40分 | 編集 |
記事のタグ: 美術史美術館
2011年3月31日(木)


目次
1. ペルセポネによる養育
2. 狩りの名手アドニス
3. 原題


今回取り上げる絵画は、アンニーバレ・カラッチ作『ヴィーナスとアドニス』です。

2011年3月31日アンニーバレ・カラッチ『ヴィーナスとアドニス』316

1. ペルセポネによる養育


没薬の木から生まれたアドニスに、愛と性の女神アプロディーテが恋をしてしまいました。
エロスの矢が、アプロディーテの豊かな乳房に当たってしまったことが原因でした。

アプロディーテは赤子のアドニスを箱に入れて、地上にいるペルセポネの下へ持参します。
この時のペルセポネは、冥府ではなく地上界で暮らす期間を過ごしていたのです。

アプロディーテはペルセポネに、箱の中は決して見ないようにと念を押しました。

箱の中を見てはいけないと言われたら、見たくなるのが心情です。
ペルセポネは誘惑に負けて、箱の中のアドニスを見てしまいました。

赤子の余りの美しさに、ペルセポネも恋に落ちてしまったのでした。
そしてアドニスは、ペルセポネに預けられ、養育されることになったのです。


2. 狩りの名手アドニス


時が経ち、少年に成長したアドニスをアプロディーテが迎えにやって来ました。
しかし、ペルセポネは美少年のアドニスを手放したくありません。

そこで天界の裁判により、1年の3分の1はアプロディーテと過ごし、3分の1はペルセポネと暮らし、残りの3分の1はアドニスの自由とすることが定められました。

アドニスは自由な期間を、アプロディーテと共に過ごすことに決めました。

このことが、ペルセポネの心を大きく傷つけます。
そして、ペルセポネの発した言葉が契機となって、アドニスは死へと追い込まれていくのです。

成長したアドニスは狩りの名手となり、毎日のように狩りに没頭する生活を送っていました。

イタリアの画家アンニーバレ・カラッチ(1560-1609)が描くアドニスは、毛皮を纏(まと)い左手には弓を持っていますね。

狩りの名手アドニスは、皮肉にも狩りの最中に命を落とすことになります。


3. 原題


アンニーバレ・カラッチ(Annibale Carracci)が制作した『ヴィーナスとアドニス』は、ドイツ語ではVenus und Adonisと言います。

この作品は、ウィーンにある美術史美術館(Kunsthistorisches Museum)で見ることが出来ます。





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ティツィアーノ・ヴェチェッリオ『アドニスの誕生』
記事URL  カテゴリ | ギリシア神話絵画 | 2011年03月30日(水)14時19分 | 編集 |
2011年3月30日(水)


目次
1. 父に恋した娘
2. 父の子を生む娘
3. 原題


今回取り上げる作品は、ティツィアーノ・ヴェチェッリオ作『アドニスの誕生』です。

2011年3月30日ティツィアーノ・ヴェチェッリオ『アドニスの誕生』70


1. 父に恋した娘


ヴィーナスは、ギリシア神話ではアプロディーテに相当します。

フェニキアの王女ミュラは、美貌の持ち主でした。
ミュラはその美貌を誇り、美の女神アプロディーテよりも美しいと口走ってしまったのです。

アプロディーテは、ミュラの傲慢な発言を許しませんでした。
息子のエロスに命じて、ミュラが実の父に恋をするよう仕向けたのです。

エロスの矢が当たったミュラは、実の父であるキュニラスを一人の男と見て恋に落ちました。
父王キュニラスは、娘ミュラの気持ちには気づいていません。

叶わぬ恋とは知りながらも、ミュラは思いを遂げたいと願い続けます。

思い悩んだミュラは、乳母に胸の内を明かしました。
乳母は、ミュラが幼い頃から身の回りの世話をして来ました。

乳母は、大人になったミュラが苦しむ姿を見て不憫に思ってしまいます。
そして、道ならぬ恋を成就させるべく、段取りをつけてしまうのです。


2. 父の子を生む娘


ある祭りの夜に、乳母は一人の未亡人をキュニラスに引き合わせます。
ミュラは変装して、この未亡人になりすまし、キュニラスと一夜を共にしました。

ミュラの願いは、ここに成就したのです。

濃厚な性交の後、キュニラスは明かりをつけました。
そして、ベッドに横たわる女性の本当の姿を見てしまったのです。

「実の娘と交わってしまった・・・。」

激怒した王はミュラを殺害しようとしましたが、彼女は何とかフェニキアから逃げ出すことが出来ました。

ミュラはただ一度の交わりで、父の子を身ごもりました。
身重の体で逃亡生活をしているミュラを哀れんだ神々は、彼女を没薬の木に変えてしまいます。

月満ちて、その木から男の子が生まれました。
名をアドニスと言います。

イタリアの画家ティツィアーノ・ヴェチェッリオ(1490頃-1576)は、アドニスが没薬の木から生まれ出る場面を描きました。

画面向かって右端に座っているのは、アプロディーテです。
アプロディーテはこの後、赤子のアドニスを僅かな時間だけ預かることになります。

画面向かって左端の男女は、成長したアドニスとアプロディーテが愛し合っている姿を表しています。

アプロディーテは、美少年アドニスのことを深く愛するようになります。
このことが、結果的にアドニスを死へと追いやることになってしまうのです。


3. 原題


ティツィアーノ・ヴェチェッリオ(Tiziano Vecellio)が描いた『アドニスの誕生』は、英語ではThe Birth of Adonisと言います。

この作品は、イタリア北部の街パドヴァ(Padova)にある美術館(Museo Civico di Padova)で見ることが出来ます。





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フェリーチェ・ジアーニ『ネプチューンとアンピトリテの結婚』
記事URL  カテゴリ | ギリシア神話絵画 | 2011年03月29日(火)20時40分 | 編集 |
2011年3月29日(火)


目次
1. 海洋神
2. 原題


今回取り上げる作品は、フェリーチェ・ジアーニ作『ネプチューンとアンピトリテの結婚』です。

2011年3月29日フェリーチェ・ジアーニ『ネプチューンとアンピトリテの結婚』243

1. 海洋神


ネプチューンは、ギリシア神話ではポセイドンに相当します。
ポセイドンは、クロノスとレアの子です。

系譜を示します。

ウラノス→クロノス→ポセイドン


冥界の王ハデスはポセイドンの兄、最高神ゼウスはポセイドンの弟になります。

イタリアの画家フェリーチェ・ジアーニ(1758-1823)が描いているのは、ポセイドンの結婚式の様子です。

相手は、アンピトリテです。

アンピトリテは、海神ネレウスとドリスの子です。
系譜を示します。

ガイア→ネレウス→アンピトリテ


向かって右で、緑色のマントを身につけているのがポセイドンです。
左手には三叉矛(さんさほこ)を持っていますね。

三叉矛は、トリアイナ又はトライデントと呼ばれることもあります。

向かって左で、白い服を着ているのがアンピトリテです。
ポセイドンとアンピトリテとの間には、トリトンが生まれることになります。

系譜を示します。

ウラノス→クロノス→ポセイドン→トリトン


2. 原題


フェリーチェ・ジアーニ(Felice Giani)が描いた『ネプチューンとアンピトリテの結婚』は、イタリア語ではIl matrimonio di Nettuno e Anfitriteと言います。

il matrimonioが、結婚、という意味です。

この作品は、イタリア北東部の街ファエンツァ(Faenza)にあるミルツェッティ邸(Palazzo Milzetti)で見ることが出来ます。





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ジョヴァンニ・フランチェスコ・ロマネッリ『ケレス』
記事URL  カテゴリ | ギリシア神話絵画 | 2011年03月28日(月)14時32分 | 編集 |
2011年3月28日(月)


目次
1. ゼウスによるデメテル強姦事件
2. 美貌の娘コレ
3. 原題


今回取り上げる作品は、ジョヴァンニ・フランチェスコ・ロマネッリ作『ケレス』です。

2011年3月28日ジョヴァンニ・フランチェスコ・ロマネッリ『ケレス』403


1. ゼウスによるデメテル強姦事件


ケレスはギリシア神話ではデメテルに相当します。

イタリアの画家ジョヴァンニ・フランチェスコ・ロマネッリ(1610-1662)が描いているのは、穀物を司る女神デメテルです。

デメテルが左手に持っているのは円形鎌です。
円形鎌は収穫の時に使う物で、デメテルを象徴する物の一つです。

デメテルは姉妹のヘラと同様に美貌の女神です。

ゼウスは既にヘラを正式な后(きさき)としていましたが、姉のデメテルの熟れた体にも強い関心を示します。

デメテルはゼウスから迫られましたが断固拒否します。

デメテルが拒絶したにも関わらず、ゼウスはデメテルの美しい官能的な肉体を強引に我がものとしました。

この性交に関してはデメテルには合意はありません。
従ってゼウスはデメテルを強姦したわけです。


2. 美貌の娘コレ


ゼウスとデメテルとの間には美しい娘コレが生まれます。
デメテルは生まれて来たコレには愛情を注ぎました。

しかし、自分を強姦したゼウスに対しては許せないという感情を抱いたままでした。

コレは後に冥界の王ハデスに見初められ強奪されることになります。
デメテルもコレも男の性欲の犠牲になったわけです。

コレは冥界に連れて行かれた後、ペルセポネと名を変えます。


3. 原題


ジョヴァンニ・フランチェスコ・ロマネッリ(Giovanni Francesco Romanelli)が描いた『ケレス』は、英語ではCeresと言います。

この作品は個人所蔵となっています。





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ピーテル・パウル・ルーベンス『ケレスと二人のニンフ』
記事URL  カテゴリ | ギリシア神話絵画 | 2011年03月27日(日)13時23分 | 編集 |
記事のタグ: プラド美術館
2011年3月27日(日)


目次
1. 穀物と豊穣の女神
2. 原題


今回取り上げる作品は、ピーテル・パウル・ルーベンス作『ケレスと二人のニンフ』です。

2011年3月27日ピーテル・パウル・ルーベンス『ケレスと二人のニンフ』464


1. 穀物と豊穣の女神


ケレスはギリシア神話ではデメテルに相当します。

デメテルは穀物と豊穣を司る女神です。
クロノスとレアの娘でゼウスの姉にあたります。

フランドルの画家ピーテル・パウル・ルーベンス(1577-1640)が描いているのは、デメテルと二人のニンフが豊作を祝っている場面です。

向かって左で青い衣装を膝に掛けているのがデメテルです。
豊満な乳房を露にして右手にはトウモロコシの穂を持っています。

デメテルが左手で掴んでいるのは豊穣の角(つの)です。
豊穣の角はラテン語でコルヌー・コピアイと言います。

コルヌー・コピアイは豊富な食べ物を象徴する角を指します。
派生的に巨万の富を指す場合もあります。

デメテルの向かって右にいる二人の女性はニンフです。


2. 原題


ピーテル・パウル・ルーベンス(Peter Paul Rubens)が描いた『ケレスと二人のニンフ』は、スペイン語ではCeres y dos ninfasと言います。

この作品はプラド美術館(Museo Nacional del Prado)で見ることが出来ます。





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アントワーヌ・ヴァトー『ケレス』
記事URL  カテゴリ | ギリシア神話絵画 | 2011年03月26日(土)13時06分 | 編集 |
2011年3月26日(土)


目次
1. オリュンポス十二神の一柱
2. 原題


今回取り上げる作品は、アントワーヌ・ヴァトー作『ケレス』です。

2011年3月26日アントワーヌ・ヴァトー『ケレス』406

1. オリュンポス十二神の一柱


ケレスはギリシア神話ではデメテルに相当します。

デメテルはクロノスとレアーの娘でゼウスの姉にあたります。
オリュンポス十二神の一柱(ひとはしら)に数えられる存在です。

フランスの画家アントワーヌ・ヴァトー(1684-1721)の作品では、デメテルの豊饒神としての役割が主題となっています。

デメテルが左手に持っているのは鎌です。
農作業の必需品ですね。

頭につけているのは稲穂の冠です。
収穫の象徴です。

向かって左にいる動物は上がライオンで下がサソリです。

ライオンは春の星座である獅子座を表しています。
サソリは夏の星座であるさそり座を表します。

向かって右に描かれているのは双子の兄弟です。
これは冬の星座である双子座を表します。

つまり春、夏、冬の星座をデメテルの脇に配しているわけですね。
そして秋の収穫の女神としてデメテルが中央に描かれているのです。


2. 原題


アントワーヌ・ヴァトー(Antoine Watteau)が描いた『ケレス』は、英語ではCeresと言います。

この作品はワシントンのナショナル・ギャラリー(National Gallery of Art, Washington, DC)で見ることが出来ます。





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フレデリック・レイトン『ヘスペリデスの園』
記事URL  カテゴリ | ギリシア神話絵画 | 2011年03月25日(金)16時53分 | 編集 |
2011年3月25日(金)


目次
1. ジブラルタル海峡
2. ラドン
3. 原題


今回取り上げる作品は、フレデリック・レイトン作『ヘスペリデスの園』です。

2011年3月25日フレデリック・レイトン『ヘスペリデスの園』334

1. ジブラルタル海峡


ヘスペリデスとは、ティタン族アトラスの娘たちを指す総称です。
アトラスとは、ティタン神族イアペトスとクリュメネとの間に生まれた息子です。

系譜を示します。

ウラノス→イアペトス→アトラス→ヘスペリデス


アトラスは、ティタノマキアにおいてゼウスと戦って敗れました。
その後、ゼウスの命により世界の西の果てで天空を支えるという役目を負わされます。

ギリシア神話における世界の西の果ては、ジブラルタル海峡近辺を意味します。

ヘスペリデスは、父アトラスが天空を支えている近くで暮らしています。
ヘスペリデスが暮らしている場所は、ヘスペリデスの園と呼ばれています。


2. ラドン


世界の西の果てに位置するヘスペリデスの園には、ヘラの果樹園があります。
その果樹園では、黄金の林檎の木が植えられています。

この黄金の林檎を守っているのがラドンです。
ラドンは、オルトロスとエキドナとの間に生まれた竜です。

ラドンは百の頭を持ち、眠ることがありません。

イギリスの画家フレデリック・レイトン(1830-1896)は、大蛇に巻き付かれているヘスペリデスを描きました。

向かって左には、木の枝に巻き付いている蛇もいますね。
黄金の林檎は、このようにしてラドンによって守られているのです。


3. 原題


フレデリック・レイトン(Frederic Leighton)が描いた『ヘスペリデスの園』は、英語ではThe Garden of the Hesperidesと言います。

この作品は、イングランド北西部の村ポート・サンライト(Port Sunlight)にあるLady Lever Art Galleryで見ることが出来ます。





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ジョン・シンガー・サージェント『アトラスとヘスペリデス』
記事URL  カテゴリ | ギリシア神話絵画 | 2011年03月24日(木)14時27分 | 編集 |
2011年3月24日(木)


目次
1. ティタン族
2. ジブラルタル海峡
3. ヘスペリデス
4. 原題


今回取り上げる作品は、ジョン・シンガー・サージェント作『アトラスとヘスペリデス』です。

2011年3月24日ジョン・シンガー・サージェント『アトラスとヘスペリデス』341

1. ティタン族


アトラスは、ティタン族のイアペトスとアシアとの間に生まれた息子です。
系譜を示します。

ウラノス→イアペトス→アトラス


ティタン族は、ゼウスらオリュンポスの神々と戦い敗れました。
この戦いを、ティタノマキアと呼んでいます。

アトラスは、ティタノマキアにおいて目覚ましい活躍を見せていました。
結果的にそのことが勝利者ゼウスの目に止まり、罰を与えられることとなりました。

ティタノマキアでティタン族が勝っていれば、アトラスは英雄と讃えられたでしょう。
けれどティタン族は敗れましたので、アトラスは戦犯となってしまったわけです。

なお、ゼウスの系譜も示します。


ウラノス→クロノス→ゼウス


2. ジブラルタル海峡


ゼウスがアトラスに与えた罰は、世界の西の果てに立ち、天空を背負うというものでした。

アメリカの画家ジョン・シンガー・サージェント(1856-1925)が描いているのは、地球を背負っているアトラスの姿です。

ギリシア神話における西の果てというのは、ジブラルタル海峡を指します。

ギリシア人にとってジブラルタル海峡を越えた先は、未知の世界でした。
従って、ジブラルタル海峡は世界の西の果てに位置付けられたわけです。

この位置付けは、その後のヨーロッパ社会の規範となりました。

船でジブラルタル海峡を越えて西へ進むということは、死を意味したわけです。
それを覆したのが、コロンブス(1451頃-1506)です。

ジブラルタル海峡の先にも大陸があるとは、多くのヨーロッパ人は思っていなかったわけですね。

英語で大西洋のことを、the Atlantic Oceanと言います。
この名称は、アトラス(Atlas)に由来します。

直訳すると、アトラスの海ということです。


3. ヘスペリデス


ジョン・シンガー・サージェントの作品には、横たわった女神たちがたくさん描かれています。
これらは、ヘスペリデスと呼ばれるアトラスの娘たちです。

世界の西の果てには「ヘスペリデスの園」があり、ヘスペリデスはそこで暮らしています。
娘たちが暮らす園の近くで、アトラスが天空を支えているわけです。


4. 原題


ジョン・シンガー・サージェント(John Singer Sargent)が描いた『アトラスとヘスペリデス』は、英語ではAtlas and the Hesperidesと言います。

この作品は、ボストン美術館(Museum of Fine Arts, Boston)で見ることが出来ます。





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ジョヴァンニ・ベネデット・カスティリョーネ『ピュラとデウカリオン』
記事URL  カテゴリ | ギリシア神話絵画 | 2011年03月23日(水)13時07分 | 編集 |
2011年3月23日(水)


目次
1. パンドラの子孫
2. パルナッソス山のテミス
3. ヘレンの子孫
4. 原題


今回取り上げる作品は、ジョヴァンニ・ベネデット・カスティリョーネ作『ピュラとデウカリオン』です。

2011年3月23日ジョヴァンニ・ベネデット・カスティリョーネ『ピュラとデウカリオン』258


1. パンドラの子孫


パンドラはエピメテウスとの間に、娘ピュラを生みました。

ピュラは、デウカリオンと結婚します。
デウカリオンは、プロメテウスとプロノイエとの間に出来た息子です。

デウカリオンとピュラが生きた時代に、大洪水が発生します。

ゼウスは、人間たちが譲り合う心を忘れ、争いに明け暮れている様子を見て人間を絶滅させることにしたのです。

デウカリオンは父プロメテウスの様子を見にコーカサス山へ赴いた時、この大洪水の発生を予め聞かされていました。

デウカリオンは周囲から馬鹿にされながらも、陸の上に箱舟を建造して大洪水に備えました。


2. パルナッソス山のテミス


デウカリオンとピュラは、箱舟に乗ったおかげでゼウスの起こした大洪水を生き残ります。
二人を乗せた箱舟は9日間漂流した後、パルナッソス山頂に漂着します。

パルナッソス山には、テミスの神殿がありました。
テミスは掟の女神で、かつてゼウスの二番目の妻でした。

広い大地に二人きりになってしまったデウカリオンとピュラは、人間を増やす手段をテミスに尋ねました。

テミスの神託は、以下のような内容でした。

「多くの人間を生み出すには、それぞれの母の骨を拾って後ろに投げながら進めば良い。」

デウカリオンはこの神託の意味を、母なる大地ガイアに転がっている石を投げながら進むと解釈しました。

デウカリオンとピュラは、石を後方に投げながら前進して行きます。

すると、間もなくデウカリオンの投げた石からは男が生まれ、ピュラの投げた石からは女が生まれました。

イタリアの画家ジョヴァンニ・ベネデット・カスティリョーネ(1609-1664)が描いているのは、デウカリオンとピュラが石を投げて人間を誕生させている場面です。

向かって左で、赤いマントを羽織っているのがデウカリオンです。
デウカリオンは、両手で石を持っています。

その向かって右で、左手に石を持っているのがピュラです。
前景下方に描かれているのは、石から誕生した人間たちです。


3. ヘレンの子孫


その後、デウカリオンとピュラの間には長男ヘレンが誕生します。
系譜を示します。

パンドラ→ピュラ→ヘレン

イアペトス→プロメテウス→デウカリオン→ヘレン


このヘレンは、ギリシア人の祖となりました。

旧約聖書の中にノアの箱舟の話が記されていますが、ギリシア神話にも同類の話があるということですね。


4. 原題


ジョヴァンニ・ベネデット・カスティリョーネ(Giovanni Benedetto Castiglione)が描いた『ピュラとデウカリオン』は、英語ではPyrrha and Deucalionと言います。

この作品は、ベルリン美術館(Staatliche Museen zu Berlin)で見ることが出来ます。




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ジュール・ジョゼフ・ルフェーブル『パンドラ』
記事URL  カテゴリ | ギリシア神話絵画 | 2011年03月22日(火)13時47分 | 編集 |
2011年3月22日(火)


目次
1. パンドラの箱
2. 希望の意味
3. 原題


今回取り上げる作品はジュール・ジョゼフ・ルフェーブル作『パンドラ』です。

2011年3月22日ジュール・ジョゼフ・ルフェーブル『パンドラ』


1. パンドラの箱


パンドラはゼウスから受け取った箱を興味本位で開けてしまいました。
すると、箱の中に閉じ込められていた要素が次から次へと外に向かって飛び出していきます。

要素とは人間を不幸にするものばかりでした。

憎しみ、争い、嫉妬、疫病、裏切り、不安、殺意、不満、貧困、恨み、後悔、悲嘆、犯罪、非業の死・・・。

パンドラが箱を開けたせいで、これらの負の要素が世界中に撒き散らされてしまったのです。
もう二度と取り返しはつきません。

フランスの画家ジュール・ジョゼフ・ルフェーブル(1836-1911)が描いているのは箱を開ける前のパンドラの姿です。

パンドラは毎日が退屈だからというそれだけの理由で変化を求め、禁じられた行為を強行しました。

「箱を開けるな。」と命じられたら絶対に開けてはいけないのです。
それにも関わらず箱を開けてしまう一つの条件は暇であることです。

するべきことがなくて暇を持て余していると、人間はろくなことをしないという教えなのでしょうね。


2. 希望の意味


箱の中に最後に残った要素は希望だったと言われています。

あらゆる災厄がこの世に散らばっても、希望さえ残っていれば人間は生きていけるという解釈がなされています。

しかし全く異なる解釈も存在します。
つまり、なまじ希望があるばっかりに人間は無駄な努力をしてしまうというのです。

成功することを夢見て希望を抱き、困難に挑戦するのが人間です。
しかし全員が目的を達するわけではありません。

むしろ希望を持たずに新しいことに挑戦しなければよかったと、後悔することの方が多いかも知れませんね。

希望があるからこそ経済的にも肉体的にも自分を追い込むのが人間です。
自分自身を追い込んだ結果、事態が悪化することもあるのです。

パンドラの箱にあった希望という要素は、必ずしも人間にとって常に好都合な結果をもたらすとは限らないという解釈も成り立つのかも知れません。


3. 原題


ジュール・ジョゼフ・ルフェーブル(Jules Joseph Lefebvre)が描いた『パンドラ』は英語ではPandoraと言います。

この作品はアルゼンチンの首都ブエノスアイレスにある美術館(Museo Nacional de Bellas Artes)で見ることが出来ます。





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ジャン・クーザン(父)『エヴァ・プリマ・パンドラ』
記事URL  カテゴリ | ギリシア神話絵画 | 2011年03月21日(月)21時37分 | 編集 |
記事のタグ: ルーヴル美術館
2011年3月21日(月)


目次
1. ヘパイストスが制作したパンドラ
2. エピメテウスとの結婚
3. 原題


今回取り上げる作品は、ジャン・クーザン(父)作『エヴァ・プリマ・パンドラ』です。

2011年3月21日ジャン・クーザン(父)『エヴァ・プリマ・パンドラ』212

1. ヘパイストスが制作したパンドラ


人間に火を与えたプロメテウスはゼウスから罰を与えられました。
ゼウスは火を手にした人間に対しても苦難を与えることにしました。

ゼウスは息子のヘパイストスを呼び、人間の女を作成するよう命じます。

当初は、地上界には男の人間しかいなかったのです。
つまり、プロメテウスが作った人間は男だけだったということですね。

ヘパイストスが創り上げた女の像にゼウスが息を吹き込みます。
これによりその像は人間の女としての命を得たのです。

人類最初の女性は地上へと向かう前に、天界における「全ての贈り物」を受け取りました。

全ての~はパン、贈り物はドラと言うので、この女性はパンドラと名付けられました。

ゼウスはパンドラに一つの箱を与えました。
そして、この箱は絶対に開けてはいけないと命じたのです。


2. エピメテウスとの結婚


プロメテウスはゼウスによってコーカサス山へ追放される前に、弟エピメテウスに一つ忠告を与えました。

「ゼウスからの贈り物には気をつけろ。」

ある日、ヘルメスがパンドラを地上界で暮らすエピメテウスのところへ連れて来ました。
ヘルメスはエピメテウスに対して「ゼウスからの贈り物だ」と言ってパンドラを引き渡します。

エピメテウスは兄プロメテウスの忠告を思い出しました。

しかし、エピメテウスは「後先のことを考えても仕方ない」という思想の持ち主でしたので、パンドラを受け取ってしまうのです。

エピは後で、メテウスは考えるという意味です。
つまり、闇雲に行動を開始して後悔する人という意味ですね。

エピメテウスは美しいパンドラを得て日々充実した生活を送るようになりました。
一方、パンドラはエピメテウスが家にいない間にすることがありません。

パンドラは退屈な時間を過ごすことが多かったのです。

何か生活の中に変化を生み出せないかと模索するパンドラは、ゼウスから渡された箱が放置されていることに気づきます。

パンドラがこの箱に手を伸ばした瞬間、彼女には僅かなためらいがあったとされています。
しかし、好奇心に負けたパンドラはついに箱のふたを開けてしまったのです。

人間にとっての不幸が数限り無く誕生した瞬間でした。


3. 原題


ジャン・クーザン(父)(Jean Cousin the Elder)が描いた『エヴァ・プリマ・パンドラ』は、フランス語ではEva Prima Pandoraと言います。

この作品に描かれた女性はパンドラに特定されているわけではありません。
旧約聖書のイヴを描いたものであるとする解釈もあります。

この作品はルーヴル美術館(Musée du Louvre)で見ることが出来ます。





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アン・ハサウェイ主演映画『プラダを着た悪魔』を見た感想
記事URL  カテゴリ | 外国映画 | 2011年03月21日(月)21時29分 | 編集 |
2011年3月21日(月)


2011年3月20日(日)にテレビ朝日で、アン・ハサウェイ主演の映画『プラダを着た悪魔(原題:The Devil Wears Prada)』を見ました。

2011年3月21日アン・ハサウェイ主演映画『プラダを着た悪魔』を見た感想 252


プラダを着た悪魔とは編集長のメリル・ストリープのことかと思っていましたが、アンのことだったんですね。

実際に、ファッション雑誌の業界にはあんな無理難題を命じる上司がいるのかしらね?

私もこの語学ブログにおいてファッション雑誌を結果的に取り上げることが少なくないので、その点でも関心を持って映画を見ました。

ELLE25ansなどの雑誌があんな慌ただしい中で作成されているとすれば、働いている人たちは相当なストレスを抱えながら業務をこなしているのだろうと思います。

アンは結局メリルとは袂を分かつのですが、私はあのまま仕事を継続してもらいたかったなと思います。

人を人とも思わないような上司に振り回されてあそこまで我慢して来たことを考えると、モッタイナイなというのが率直な感想です。

私にはとてもアンの真似は出来ませんね。
精神も肉体ももっと早くに壊れていると思います。

語学のように自分の得意な分野であればある程度の無理難題でもやりこなす自信はありますが、出版されていないJ・K・ローリングの本を取り寄せるのは私には無理です。

あそこまでではないにしても、それに近い仕事をやりこなしている女性が出版業界にはたくさんいるのかも知れませんね。


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ピーテル・パウル・ルーベンス『縛られたプロメテウス』
記事URL  カテゴリ | ギリシア神話絵画 | 2011年03月20日(日)12時29分 | 編集 |
2011年3月20日(日)


目次
1. 大鷲に食われる肝臓
2. 原題


今回取り上げる作品はピーテル・パウル・ルーベンス作『縛られたプロメテウス』です。

2011年3月20日ピーテル・パウル・ルーベンス『縛られたプロメテウス』378


1. 大鷲に食われる肝臓


プロメテウスはゼウスの命令によりカウカソス山頂に繋がれる身となりました。

身動きの出来ないプロメテウスを目がけて毎日大鷲がやって来ます。
大鷲はプロメテウスの肝臓を啄(ついば)みにやって来るのです。

肝臓は再生能力が強いため、昨日啄まれても今日は再び元通りになります。

プロメテウスは夜の内に再生した肝臓を翌日再び大鷲に啄まれるという日々を延々と送ることになったのです。

フランドルの画家ルーベンス(1577-1640)は大鷲が肝臓を啄んでいる瞬間を描きました。
大鷲は抵抗しようとするプロメテウスの顔を左足で抑えつけています。

向かって左下に描かれているのはプロメテウスが人間に与えた火を示しています。
人間の生活を豊かにするために火を盗んだ結果、プロメテウスはこのような罰を与えられたのでした。

プロメテウスという名前はプロ(先に)+メテウス(考える)という構成です。
弟であるエピメテウス(後で考える)との対比で捉えられています。

しかし、この結末を見ると先を見通していたとは言い難いですよね。


2. 原題


ルーベンス(Rubens)が描いた『縛られたプロメテウス』は英語ではPrometheus Boundと言います。

bind ZはZを縛るという意味です。

この作品はアメリカのペンシルヴェニア州の都市フィラデルフィアにあるフィラデルフィア美術館(Philadelphia Museum of Art )で見ることが出来ます。





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Dirck van Baburen『ヴァルカンによって鎖でつながれるプロメテウス』
記事URL  カテゴリ | ギリシア神話絵画 | 2011年03月19日(土)16時48分 | 編集 |
2011年3月19日(土)


目次
1. ヘパイストスの鎖
2. 原題


今回取り上げる作品は、Dirck van Baburen作『ヴァルカンによって鎖でつながれるプロメテウス』です。

2011年3月19日Dirck van Baburen『ヴァルカンによって鎖でつながれるプロメテウス』341


1. ヘパイストスの鎖


ゼウスの命令に背いたプロメテウスは、罰としてカウカソス山の山頂にはり付けにされました。
カウカソス山とは、現在のコーカサス地方にある山脈に同定されます。

コーカサス地方は、黒海とカスピ海に挟まれた地域でグルジアやアゼルバイジャンがある辺りです。

オランダの画家Dirck van Baburen(1595-1624)が描いているのは、鍛冶の神ヘパイストスがプロメテウスに鎖をはめているところです。

向かって左で立っている男神が、ヘパイストスです。

プロメテウスは、画面中央で仰向けになっています。
プロメテウスの右の手首は、既に固定されています。

ゼウスはプロメテウスをカウカソス山へ送るにあたり、永久に逃げ出すことが出来ないように、ヘパイストスに命じて鎖で繋がせたのです。


2. 原題


Dirck van Baburenが描いた『ヴァルカンによって鎖でつながれるプロメテウス』は、英語ではPrometheus Being Chained by Vulcanと言います。

この作品は、アムステルダム国立美術館(Rijksmuseum Amsterdam)で見ることが出来ます。





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ハインリッヒ・フリードリッヒ・フューガー『人間たちに火をもたらすプロメテウス』
記事URL  カテゴリ | ギリシア神話絵画 | 2011年03月18日(金)11時10分 | 編集 |
2011年3月18日(金)


目次
1. 火を盗むプロメテウス
2. ゼウスの怒り
3. 原題


今回取り上げる作品は、ハインリッヒ・フリードリッヒ・フューガー作『人間たちに火をもたらすプロメテウス』です。

2011年3月18日ハインリッヒ・フリードリッヒ・フューガー『人間たちに火をもたらすプロメテウス』not

1. 火を盗むプロメテウス


ある日、プロメテウスは天界から地上で暮らす人間たちの様子を眺めていました。
人間たちは寒さに凍え、猛獣たちの驚異に晒されながら貧しい生活を送っていました。

人間たちの惨めな生活を改善するために、プロメテウスは人間に火を与えようと考えます。
火があれば人間は暖を取ることが出来ますし、猛獣を追い払うことも出来ます。

人間という生き物を創り上げたのは、プロメテウスでした。
創造者として人間の有様を見ている内に、哀れみを感じたのかも知れません。

しかし、最高神ゼウスはプロメテウスの考えに反対します。

火は神々の独占物であり、死ぬ運命にある人間たちに与える必要はないというのがゼウスの考えでした。

それでもプロメテウスは、人間のために火を与えることを決意します。
そして、ヘパイストスの鍛冶場から火を盗み出したのです。

ドイツの画家ハインリッヒ・フリードリッヒ・フューガー(1751-1818)が描いているのは、松明を掲げたプロメテウスの姿です。

プロメテウスは、神々の反対を無視する形で人間たちに火を与えました。
左手の人差し指を唇の前に置いているのは、内密の行為であることを示しています。

向かって左に描かれている彫像は、暖かさを得られない生き物の姿を描いています。
火がもたらされるまでは、人間はこのような生気のない姿で暮らしていたわけです。


2. ゼウスの怒り


間もなくゼウスは、人間界に火がもたらされたことを知ります。
そして、プロメテウスが火を盗んだことを知りました。

最高神ゼウスは、プロメテウスの行動に対して激怒します。
この後、プロメテウスには拷問が待っています。


3. 原題


ハインリッヒ・フリードリッヒ・フューガー(Heinrich Friedrich Füger)が描いた『人間たちに火をもたらすプロメテウス』は、ドイツ語ではPrometheus bringt den Menschen das Feuerと言います。

Z bringenは、Zを持って来る、という意味です。

der Menschは、人間、という意味です。
ここでは、複数形3格(den Menschen)になっています。

das Feuerの語義は、火です。
ここでは、4格になっています。

この作品は、ウィーンにあるリヒテンシュタイン美術館で見ることが出来ます。





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