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ティツィアーノ・ヴェチェッリオ『タルクィニウスとルクレティア』
記事URL  カテゴリ | ローマ建国史絵画 | 2012年04月20日(金)13時12分 | 編集 |
2012年4月20日(金)


目次
1. 王政末期
2. 貞淑な妻
3. 強姦魔
4. 原題


今回取り上げる作品は、ティツィアーノ・ヴェチェッリオ作『タルクィニウスとルクレティア』です。

2012年4月20日ティツィアーノ・ヴェチェッリオ『タルクィニウスとルクレティア』441

1. 王政末期


古代ローマの初代王ロムルス(在位:紀元前753-紀元前715)以来、王政ローマに君臨した王は、全部で7人です。

最後の第7代王は、ルキウス・タルクィニウス・スペルブス(在位:紀元前535-紀元前509)といって、「傲慢王」という渾名(あだな)が付けられるほど、ローマ市民からの評判は悪い王でした。

ティツィアーノ・ヴェチェッリオ(1490頃-1576)の作品名には、タルクィニウスという名前がありますが、これは第7代王ルキウス・タルクィニウス・スペルブスのことではありません。

ルキウス・タルクィニウス・スペルブスの息子である、セクストゥス・タルクィニウスを指します。
系譜を示します。

ルキウス・タルクィニウス・プリスクス(第5代王)→ルキウス・タルクィニウス・スペルブス(第7代王)→セクストゥス・タルクィニウス


王子セクストゥス・タルクィニウスの蛮行が、ローマを王政から共和政に移行させることになります。
その歴史の流れの中で犠牲者となり、自刃(じじん)して果てたのが、美貌の人妻ルクレティアです。


2. 貞淑な妻


戦地に赴いていた王子セクストゥス・タルクィニウスは、ルクレティアの夫コッラティヌスたちと共に、陣中を抜け出します。

そして、それぞれの妻が夫のいない間に、どのような生活をしているのかを、盗み見ることにしました。

要するに、貞節を守って生活しているかどうか、浮気していないかどうかを、確認しに行ったわけです。

セクストゥス・タルクィニウスら王家の妻たちは、宴会に興じて、不埒な生活を送っていました。
要するに、夫のいない間に、いろんな男性とセックスを楽しんでいた、ということですね。

一方、コッラティヌスの妻ルクレティアは、静かに夫の帰りを待ち、貞節を守って暮らしていました。

貞淑な人妻であるルクレティアの姿を見たセクストゥス・タルクィニウスは、一目で恋に落ちます。

傲慢王の息子として我儘勝手に振舞うことが許される立場にあったセクストゥス・タルクィニウスは、美貌のルクレティアと一夜を共にする計画を立てました。


3. 強姦魔


数日後、セクストゥス・タルクィニウスは、コッラティヌスの不在を狙って犯罪を決行します。
家の中にいたルクレティアに忍び寄り、王子であることを明かして、性交することを求めました。

普段は、いかに貞淑な妻を装っているとは言え、男から言い寄られたら心変わりする女がたくさんいることを、セクストゥス・タルクィニウスは経験上知っていました。

しかも、自分は王子という立場です。
この世で手に入らないものは何もない、と信じて生きています。

ところが、ルクレティアは貞節を守るために、セクストゥス・タルクィニウスの誘いを断りました。

恥をかかされたセクストゥス・タルクィニウスは、本性を剥き出しにして、力づくでルクレティアをものにしようと方針転換しました。

激昂したセクストゥス・タルクィニウスは、刃物をちらつかせ、怯えるルクレティアにこう言いました。


「言う通りにしなければ、奴隷と密会していたかのように見せかけて殺す!」


ルクレティアを強姦した後、殺すだけでなく、奴隷の死体を傍に置いて、ルクレティアが浮気をしていたと周囲が認めるような状況を作る、と言っているわけです。

つまり、ルクレティアが奴隷と密会している現場に、セクストゥス・タルクィニウスが偶然踏み込み、情事にふける2人を成敗するために、やむを得ず殺したと証言すれば、世間は王子であるセクストゥス・タルクィニウスの言うことを信じるだろう、ということです。

卑劣です。

権力を笠に着て、抵抗の意志を示している女性を黙らせるとは、卑怯以外の何物でもありません。
でも、現代でもこういう男は、恐らくいるのでしょうね。

続きます。


4. 原題


ティツィアーノ・ヴェチェッリオ(Tiziano Vecellio)が制作した『タルクィニウスとルクレティア』は、英語ではTarquin and Lucretiaと言います。

この作品は、イングランドのケンブリッジ大学にあるフィッツウィリアム美術館(Fitzwilliam Museum)で見ることが出来ます。





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