2011年9月30日(金)
目次
1. 狩りの女神アルテミス
2. アポロンの奸計
3. オリオン座とサソリ座
4. アルテミスとセレネ
5. 原題
今回取り上げる作品は、Daniel Seiter作『オリオンの死体の隣にいるディアナ』です。

1. 狩りの女神アルテミス
クレタ島に渡ったオリオンは、狩りの女神アルテミスと運命的な出会いをします。
アルテミスは狩りの女神であると同時に処女神なので、通例では男には全く興味を示しません。
ところがオリオンは例外で二人は恋に落ちました。
オリオンとアルテミスはお互いに狩りの名手ですので、一緒に狩猟に出掛け共通の話題で会話を楽しむことが出来ます。
オリオンとアルテミスは交際を深めて行き、やがて結婚を考えるようになります。
この様子を傍で見ていたアポロンは、姉アルテミスにアポロンとの結婚を思い止まるよう諭しました。
なぜなら、オリオンにはキオス王女メロペを強姦したという実績があるため、オリオンの持つそうした凶暴な性格をアポロンは懸念していたからです。
ところが恋に落ちたアルテミスは、弟アポロンの言うことに耳を傾けようとしません。
そこでアポロンはオリオンを亡き者にするために、大地の女神ガイアを訪ねて次のように伝えました。
「オリオンは地上に生きる全ての獣を射殺するつもりだと言っていますよ。」
ガイアはオリオンがこうした考えを持っていることを快く思わず、罰を与えるためにオリオンの元へ刺客としてサソリを送り込みました。
浜辺にいたオリオンは襲いかかって来る巨大なサソリに向かって矢を放ちますが一向に効き目がなく、身の危険を感じます。
やむを得ずオリオンは一旦、海の中へと逃げることにします。
2. アポロンの奸計
オリオンは岸からはかなり離れた場所に浮かんでいますので、ここならサソリが襲って来ることはありません。
オリオンは沖でしばらくの間、今後の戦略を練っていました。
アポロンは海岸の木々に隠れて、オリオンとサソリとの戦いを一部始終見ていました。
オリオンがサソリのいる海岸から逃げて沖で浮かんでいるのも、アポロンはもちろん知っています。
そこへ、アルテミスがやって来ました。
アルテミスはオリオンが沖にいることは知りません。
アポロンは姉アルテミスに次のように言いました。
「狩りの名手と呼ばれるあなたであっても、あれだけ遠く離れた場所にあるモノを射抜くことは出来ないでしょう。」
そう言って、アポロンはオリオンの体が見える方向を指差しました。
岸からは距離が遠すぎてアルテミスにはそれが何なのかはわかっていません。
負けん気の強いアルテミスは自分の実力を示すために、沖に見える「モノ」に狙いを定めて矢を放ちました。
アルテミスの放った矢は見事に対象物に命中しました。
アポロンはアルテミスの正確な腕前に感嘆の声を挙げながら、去って行きました。
しばらくして打ち寄せる波が、先程アルテミスによって射抜かれた「モノ」を岸へと運びます。
岸に辿り着いたのはモノではなく男性の死体でした。
それはオリオンの死体だったのです。
3. オリオン座とサソリ座
イタリアの画家Daniel Seiter(1642頃-1705)が描いているのは、オリオンの死体を見て嘆いているアルテミスの姿です。
前景で全裸で横たわっているのが死んだオリオンです。
オリオンを見つめるアルテミスは、知らなかったとは言え自分が射殺したという事実に愕然としています。
男のオリオンが膝を開いているのとは対照的に、アルテミスは女神らしく膝を閉じて両足も揃えています。
この後、オリオンはゼウスの計らいで星座として天に上げられました。
また、オリオンを付け狙ったサソリも星座になりました。
オリオン座が大空でサソリ座に追われていると解釈されているのは、この話が源になっていると言われています。
4. アルテミスとセレネ
処女神であるアルテミスがオリオンと恋に落ちるのは不可解な気がしますね。
本来のアルテミスはアテナ同様、恋愛を疎んじセックスを嫌悪しています。
そんな男嫌いのアルテミスがオリオンとの恋に夢中になったのは、アルテミスが月の女神セレネの性格を引き継いだことに由来するという説もあります。
本来、ギリシア神話における月の女神はセレネだったのですが、時代が進むにつれてセレネとアルテミスの逸話が混同されるようになり、いつの間にかアルテミスは月の女神とされたという経緯があります。
もしかするとオリオンと恋に落ちたのは、当初はセレネだったのかも知れません。
ただ、セレネは狩りの名手ではありませんので、オリオンを射殺することは考えにくいです。
こうした整合性のつかない逸話が散りばめられているのが、ギリシア神話なのです。
5. 原題
Daniel Seiterが描いた『オリオンの死体の隣にいるディアナ』は、英語ではDiana next to the Corpse of Orionと言います。
この作品はルーヴル美術館(Musée du Louvre)で見ることが出来ます。
目次
1. 狩りの女神アルテミス
2. アポロンの奸計
3. オリオン座とサソリ座
4. アルテミスとセレネ
5. 原題
今回取り上げる作品は、Daniel Seiter作『オリオンの死体の隣にいるディアナ』です。

1. 狩りの女神アルテミス
クレタ島に渡ったオリオンは、狩りの女神アルテミスと運命的な出会いをします。
アルテミスは狩りの女神であると同時に処女神なので、通例では男には全く興味を示しません。
ところがオリオンは例外で二人は恋に落ちました。
オリオンとアルテミスはお互いに狩りの名手ですので、一緒に狩猟に出掛け共通の話題で会話を楽しむことが出来ます。
オリオンとアルテミスは交際を深めて行き、やがて結婚を考えるようになります。
この様子を傍で見ていたアポロンは、姉アルテミスにアポロンとの結婚を思い止まるよう諭しました。
なぜなら、オリオンにはキオス王女メロペを強姦したという実績があるため、オリオンの持つそうした凶暴な性格をアポロンは懸念していたからです。
ところが恋に落ちたアルテミスは、弟アポロンの言うことに耳を傾けようとしません。
そこでアポロンはオリオンを亡き者にするために、大地の女神ガイアを訪ねて次のように伝えました。
「オリオンは地上に生きる全ての獣を射殺するつもりだと言っていますよ。」
ガイアはオリオンがこうした考えを持っていることを快く思わず、罰を与えるためにオリオンの元へ刺客としてサソリを送り込みました。
浜辺にいたオリオンは襲いかかって来る巨大なサソリに向かって矢を放ちますが一向に効き目がなく、身の危険を感じます。
やむを得ずオリオンは一旦、海の中へと逃げることにします。
2. アポロンの奸計
オリオンは岸からはかなり離れた場所に浮かんでいますので、ここならサソリが襲って来ることはありません。
オリオンは沖でしばらくの間、今後の戦略を練っていました。
アポロンは海岸の木々に隠れて、オリオンとサソリとの戦いを一部始終見ていました。
オリオンがサソリのいる海岸から逃げて沖で浮かんでいるのも、アポロンはもちろん知っています。
そこへ、アルテミスがやって来ました。
アルテミスはオリオンが沖にいることは知りません。
アポロンは姉アルテミスに次のように言いました。
「狩りの名手と呼ばれるあなたであっても、あれだけ遠く離れた場所にあるモノを射抜くことは出来ないでしょう。」
そう言って、アポロンはオリオンの体が見える方向を指差しました。
岸からは距離が遠すぎてアルテミスにはそれが何なのかはわかっていません。
負けん気の強いアルテミスは自分の実力を示すために、沖に見える「モノ」に狙いを定めて矢を放ちました。
アルテミスの放った矢は見事に対象物に命中しました。
アポロンはアルテミスの正確な腕前に感嘆の声を挙げながら、去って行きました。
しばらくして打ち寄せる波が、先程アルテミスによって射抜かれた「モノ」を岸へと運びます。
岸に辿り着いたのはモノではなく男性の死体でした。
それはオリオンの死体だったのです。
3. オリオン座とサソリ座
イタリアの画家Daniel Seiter(1642頃-1705)が描いているのは、オリオンの死体を見て嘆いているアルテミスの姿です。
前景で全裸で横たわっているのが死んだオリオンです。
オリオンを見つめるアルテミスは、知らなかったとは言え自分が射殺したという事実に愕然としています。
男のオリオンが膝を開いているのとは対照的に、アルテミスは女神らしく膝を閉じて両足も揃えています。
この後、オリオンはゼウスの計らいで星座として天に上げられました。
また、オリオンを付け狙ったサソリも星座になりました。
オリオン座が大空でサソリ座に追われていると解釈されているのは、この話が源になっていると言われています。
4. アルテミスとセレネ
処女神であるアルテミスがオリオンと恋に落ちるのは不可解な気がしますね。
本来のアルテミスはアテナ同様、恋愛を疎んじセックスを嫌悪しています。
そんな男嫌いのアルテミスがオリオンとの恋に夢中になったのは、アルテミスが月の女神セレネの性格を引き継いだことに由来するという説もあります。
本来、ギリシア神話における月の女神はセレネだったのですが、時代が進むにつれてセレネとアルテミスの逸話が混同されるようになり、いつの間にかアルテミスは月の女神とされたという経緯があります。
もしかするとオリオンと恋に落ちたのは、当初はセレネだったのかも知れません。
ただ、セレネは狩りの名手ではありませんので、オリオンを射殺することは考えにくいです。
こうした整合性のつかない逸話が散りばめられているのが、ギリシア神話なのです。
5. 原題
Daniel Seiterが描いた『オリオンの死体の隣にいるディアナ』は、英語ではDiana next to the Corpse of Orionと言います。
この作品はルーヴル美術館(Musée du Louvre)で見ることが出来ます。
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2011/09/30(金) 14:11 | このエントリーのカテゴリ ギリシア神話絵画 |
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