2012年3月4日(日)
目次
1. ポセイドンの怒り
2. アネモイの主アイオロス
3. 開封厳禁
4. 魔女キルケ
5. キルケの魔法
6. ヘルメスの援助
7. 原題
今回取り上げる作品は、Jan van Bijlert作『オデュッセウスとキルケ』です。

1. ポセイドンの怒り
単眼の巨人ポリュペモスのいる島を脱出したオデュッセウス一行は、その後、ポリュペモスの父ポセイドンの嫌がらせを受けていくことになります。
海神ポセイドンは、騙し討ちのような格好でポリュペモスの目を潰し、羊を奪ったオデュッセウスを、絶対に許さないのです。
オデュッセウスは、機知に富み、王としての素養も備えた人物でしたが、逆に、才気煥発な自分の力を過信する一面もあり、神への信心が足りない男でした。
ギリシア神話では、神への不信心は最大級の罪とされます。
人間に対して何も悪事を働かなくても、神を馬鹿にするような発言をしただけで狂気を吹き込まれたり、命を奪われたりするのがギリシア神話の世界です。
オデュッセウスも、神の加護がなければ自分の能力も半減することを、いち早く自覚するべきでしたが、有能であるだけに、そのことに気づくのが遅いわけですね。
2. アネモイの主アイオロス
さて、その後、オデュッセウス一行は、アネモイの主(あるじ)アイオロスの住むアイオリア島に漂着します。
アネモイとは、ギリシア神話における風の神です。
主要なアネモイは、ボレアス、ノトス、ゼピュロス、エウロスの4柱(はしら)です。
アイオロスは、ゼウスの好意を得て、これら4柱を配下に置き、風を支配する立場にありました。
アイオロスは、トロイ戦争の英雄オデュッセウスを歓待し、あっという間に1ヶ月が経過します。
そろそろイタキ島へと戻りたいというオデュッセウスに対して、アイオロスは、少しでも早く故郷に帰れるようにと、イタキ島への航路を遮るような風を、全て大袋に閉じ込めて、オデュッセウスに渡しました。
3. 開封厳禁
アイオロスは別れ際に、この袋は絶対に開けてはいけないと、オデュッセウスに念を押しました。
せっかく閉じ込めた逆風が、開封によって威力を発揮し、イタキ島から船が遠ざかる作用を及ぼすからです。
船の中に大きな袋を持って来たオデュッセウスを見て、部下たちはオデュッセウスだけが、アイオロスから財宝を受け取ったのだと誤解します。
オデュッセウスは、アイオロスの忠告を守り、その大袋を片時も離さずに大事そうに管理していました。
その趣旨をちゃんと部下たちに説明しておけば良かったのですが、オデュッセウスにはその意志はありませんでした。
10日後、イタキ島が遠くに見える位置まで、船が順調に進みました。
オデュッセウスは、長旅の疲れから、深い眠りについています。
イタキ島では、主オデュッセウスの帰還を待つ飼い犬のアルゴスが、潮風に乗って運ばれて来るオデュッセウスの匂いを察知して、喜んで吠えています。
その様子を見て、妻ペネロペや息子テレマコスらも、オデュッセウスの帰還が間近であることを実感します。
岸壁まで行くと、かすかに船の舳先が見えます。
ようやく、これでイタキ島へと戻れると船員たちが喜んだその時、一部の部下たちが、財宝目当てにアイオロスの大袋を開けてしまいました。
その瞬間、轟音と共に強風が吹き荒れ、オデュッセウスたちを乗せた船は、イタキ島を目の前にしながら、逆風に煽られて遥か遠くへと押し戻されてしまいます。
轟音によって目が覚めたオデュッセウスは、猛烈な時化(しけ)の中で、なんとか生き延びましたが、数隻の船は大破し、多くの船員たちは海の藻屑と化しました。
4. 魔女キルケ
その後、数日が経ち、オデュッセウスたちが到着したのは、アイアイエ島でした。
アイアイエ島には、魔女キルケが住んでいます。
キルケは、太陽神ヘリオスと女神ペルセイスの娘です。
コルキス王アイエテスは、実兄に当たります。
系譜を示します。
ウラノス→ヒュペリオン→ヘリオス→キルケ
キルケは、アイアイエ島にやって来た人間の男を、歓待するふりをして、しばらく養います。
そして男に対する興味がなくなると、魔法の力で獣や家畜に変えてしまうのです。
そんな魔力を持ったキルケの元へ、オデュッセウスたちは辿り着いてしまったのです。
5. キルケの魔法
オデュッセウスは、偵察のために数名の部下たちをキルケの元へ派遣します。
彼らは、キルケから飲み物を提供されました。
この飲み物には、キルケの魔法がかかっていたのです。
キルケは、差し出した飲み物を口にしたオデュッセウスの部下たちを、杖で打ちました。
すると、その者たちは、全員が豚に変えられてしまったのです。
オデュッセウスの部下の内、エウリュロコスだけは念の為に屋敷の中には同行せず、外からその様子を見ていました。
そして、そこから一目散に逃げて、離れた場所にいるオデュッセウスのところに駆け込んで、事の次第を報告します。
6. ヘルメスの援助
豚に変身させられた部下たちを救出するために、オデュッセウスはキルケの館へと急ぎます。
その途中で、オデュッセウスの前にヘルメスが現れました。
そしてヘルメスは、モーリュと呼ばれる薬草をオデュッセウスに与えます。
このモーリュは、キルケの魔法を打ち消す効力があるという薬草です。
オデュッセウスは、ヘルメスからもらったモーリュを食べてから、キルケの屋敷に入りました。
キルケと面会したオデュッセウスは、部下たちと同じようにキルケから飲み物を勧められました。
オランダの画家Jan van Bijlert(1597頃-1671)が描いているのは、キルケがこれからオデュッセウスに飲み物を与えようとしている場面です。
画面中央で座り、右手に魔法の杖を持っているのがキルケです。
キルケは、魔法使いであると同時に、絶世の美女でもあるのです。
その向かって左で、白い羽のついた帽子をかぶっているのがオデュッセウスです。
画面向かって右端には、立っている女性が描かれ、オデュッセウスに対して、飲み物を給仕しようとしています。
7. 原題
Jan van Bijlertが描いた『オデュッセウスとキルケ』は、英語では『Ulysses and Circe』と言います。
この作品は、個人所蔵となっています。
目次
1. ポセイドンの怒り
2. アネモイの主アイオロス
3. 開封厳禁
4. 魔女キルケ
5. キルケの魔法
6. ヘルメスの援助
7. 原題
今回取り上げる作品は、Jan van Bijlert作『オデュッセウスとキルケ』です。

1. ポセイドンの怒り
単眼の巨人ポリュペモスのいる島を脱出したオデュッセウス一行は、その後、ポリュペモスの父ポセイドンの嫌がらせを受けていくことになります。
海神ポセイドンは、騙し討ちのような格好でポリュペモスの目を潰し、羊を奪ったオデュッセウスを、絶対に許さないのです。
オデュッセウスは、機知に富み、王としての素養も備えた人物でしたが、逆に、才気煥発な自分の力を過信する一面もあり、神への信心が足りない男でした。
ギリシア神話では、神への不信心は最大級の罪とされます。
人間に対して何も悪事を働かなくても、神を馬鹿にするような発言をしただけで狂気を吹き込まれたり、命を奪われたりするのがギリシア神話の世界です。
オデュッセウスも、神の加護がなければ自分の能力も半減することを、いち早く自覚するべきでしたが、有能であるだけに、そのことに気づくのが遅いわけですね。
2. アネモイの主アイオロス
さて、その後、オデュッセウス一行は、アネモイの主(あるじ)アイオロスの住むアイオリア島に漂着します。
アネモイとは、ギリシア神話における風の神です。
主要なアネモイは、ボレアス、ノトス、ゼピュロス、エウロスの4柱(はしら)です。
アイオロスは、ゼウスの好意を得て、これら4柱を配下に置き、風を支配する立場にありました。
アイオロスは、トロイ戦争の英雄オデュッセウスを歓待し、あっという間に1ヶ月が経過します。
そろそろイタキ島へと戻りたいというオデュッセウスに対して、アイオロスは、少しでも早く故郷に帰れるようにと、イタキ島への航路を遮るような風を、全て大袋に閉じ込めて、オデュッセウスに渡しました。
3. 開封厳禁
アイオロスは別れ際に、この袋は絶対に開けてはいけないと、オデュッセウスに念を押しました。
せっかく閉じ込めた逆風が、開封によって威力を発揮し、イタキ島から船が遠ざかる作用を及ぼすからです。
船の中に大きな袋を持って来たオデュッセウスを見て、部下たちはオデュッセウスだけが、アイオロスから財宝を受け取ったのだと誤解します。
オデュッセウスは、アイオロスの忠告を守り、その大袋を片時も離さずに大事そうに管理していました。
その趣旨をちゃんと部下たちに説明しておけば良かったのですが、オデュッセウスにはその意志はありませんでした。
10日後、イタキ島が遠くに見える位置まで、船が順調に進みました。
オデュッセウスは、長旅の疲れから、深い眠りについています。
イタキ島では、主オデュッセウスの帰還を待つ飼い犬のアルゴスが、潮風に乗って運ばれて来るオデュッセウスの匂いを察知して、喜んで吠えています。
その様子を見て、妻ペネロペや息子テレマコスらも、オデュッセウスの帰還が間近であることを実感します。
岸壁まで行くと、かすかに船の舳先が見えます。
ようやく、これでイタキ島へと戻れると船員たちが喜んだその時、一部の部下たちが、財宝目当てにアイオロスの大袋を開けてしまいました。
その瞬間、轟音と共に強風が吹き荒れ、オデュッセウスたちを乗せた船は、イタキ島を目の前にしながら、逆風に煽られて遥か遠くへと押し戻されてしまいます。
轟音によって目が覚めたオデュッセウスは、猛烈な時化(しけ)の中で、なんとか生き延びましたが、数隻の船は大破し、多くの船員たちは海の藻屑と化しました。
4. 魔女キルケ
その後、数日が経ち、オデュッセウスたちが到着したのは、アイアイエ島でした。
アイアイエ島には、魔女キルケが住んでいます。
キルケは、太陽神ヘリオスと女神ペルセイスの娘です。
コルキス王アイエテスは、実兄に当たります。
系譜を示します。
ウラノス→ヒュペリオン→ヘリオス→キルケ
キルケは、アイアイエ島にやって来た人間の男を、歓待するふりをして、しばらく養います。
そして男に対する興味がなくなると、魔法の力で獣や家畜に変えてしまうのです。
そんな魔力を持ったキルケの元へ、オデュッセウスたちは辿り着いてしまったのです。
5. キルケの魔法
オデュッセウスは、偵察のために数名の部下たちをキルケの元へ派遣します。
彼らは、キルケから飲み物を提供されました。
この飲み物には、キルケの魔法がかかっていたのです。
キルケは、差し出した飲み物を口にしたオデュッセウスの部下たちを、杖で打ちました。
すると、その者たちは、全員が豚に変えられてしまったのです。
オデュッセウスの部下の内、エウリュロコスだけは念の為に屋敷の中には同行せず、外からその様子を見ていました。
そして、そこから一目散に逃げて、離れた場所にいるオデュッセウスのところに駆け込んで、事の次第を報告します。
6. ヘルメスの援助
豚に変身させられた部下たちを救出するために、オデュッセウスはキルケの館へと急ぎます。
その途中で、オデュッセウスの前にヘルメスが現れました。
そしてヘルメスは、モーリュと呼ばれる薬草をオデュッセウスに与えます。
このモーリュは、キルケの魔法を打ち消す効力があるという薬草です。
オデュッセウスは、ヘルメスからもらったモーリュを食べてから、キルケの屋敷に入りました。
キルケと面会したオデュッセウスは、部下たちと同じようにキルケから飲み物を勧められました。
オランダの画家Jan van Bijlert(1597頃-1671)が描いているのは、キルケがこれからオデュッセウスに飲み物を与えようとしている場面です。
画面中央で座り、右手に魔法の杖を持っているのがキルケです。
キルケは、魔法使いであると同時に、絶世の美女でもあるのです。
その向かって左で、白い羽のついた帽子をかぶっているのがオデュッセウスです。
画面向かって右端には、立っている女性が描かれ、オデュッセウスに対して、飲み物を給仕しようとしています。
7. 原題
Jan van Bijlertが描いた『オデュッセウスとキルケ』は、英語では『Ulysses and Circe』と言います。
この作品は、個人所蔵となっています。
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