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アルブレヒト・デューラー『妻によって嘲笑されるヨブ』
記事URL  カテゴリ | 旧約聖書絵画 | 2013年04月24日(水)23時03分 | 編集 |
2013年4月24日(水)


目次
1. 試される信仰心
2. 神公認の試練
3. ヨブのその後
4. 原題


今回取り上げる作品は、アルブレヒト・デューラー作『妻によって嘲笑されるヨブ』です。

2013年4月24日アルブレヒト・デューラー『妻によって嘲笑されるヨブ』636

1. 試される信仰心


旧約聖書『ヨブ記』は、無償の信仰が成り立つかどうかを題材としています。

主人公のヨブは、ウツという街で暮らす義人です。
ウツとは、現在の死海の南側にあった街だと考えられています。

ヨブは経済的に成功し、たくさんの子宝にも恵まれた男でした。
さらに神を敬い高潔な人物として、人々から慕われていました。

ある日、悪魔はヨブの信仰心に疑念を抱きます。

豊かな生活が保たれているからこそ信仰心に篤いと言われる生活をしているだけであり、もし経済的な基盤が崩れたら神を罵るのではないかということです。

悪魔はヨブの真の信仰心を試すために、ヨブの幸せの基盤を尽く奪っていくことにしました。

神はヨブの義心を信頼していましたので、サタンの悪巧みを容認しました。
つまり、ヨブを陥れようとする悪魔の試みを神は防がなかった、ということです。

ヨブは、神から絶対的な信頼を得ていました。
だからこそ、神はヨブが悪魔の仕打ちに耐えて信仰を保ち続けるだろうと考えたのです。

現世的な利益がなくても、人間は神を愛せるのかどうか・・・、

義人ヨブに問われたのは、この側面だったわけです。


2. 神公認の試練


まず、ヨブは富の源である家畜を全て略奪されました。
次に、子供たちが災害で次々に命を落とします。

最後に、ヨブは全身に思い皮膚病を患(わずら)いました。
この状況の中で、それでも今まで通り神を敬えるのかどうかが試されたわけです。

ドイツの画家アルブレヒト・デューラー(1471-1528)は、苦境に陥ったヨブと彼の妻の姿を描いています。

ヨブは落胆した表情で腰を下ろしています。
爛れた皮膚は、思い皮膚病を患っていることを表しています。

どれだけ信仰を維持しようと思っても、ここまで不幸が重なると心に一抹の迷いが生じるはずです。

ところが義人ヨブは、神への忠誠を失いません。
ここまで落ちぶれた人生になっても、豊かな時と同様に神を信じています。

ヨブの妻は、そんな夫の生き方を見て嘲笑するのです。
経済的な豊かさを失ってまで、なぜ神を敬うのかというのが妻の立場です。

現世的な利益を得られるから神を信仰するのであって、不利益しか得られないのであれば神など捨てて死んだ方がましだ、と妻は言いました。

神を呪う妻の言葉を諌めたヨブに、妻は頭から冷水を浴びせかけます。

妻が言っているのは、信仰だけでは人間は生きてはいけないということですね。
現実的にはもっともな言い分です。

現実問題としてヨブは皮膚病に苦しみ、痒みや痛みと戦わないといけません。
長く皮膚病を患って、治る見込みすらありません。

自分の苦痛が長期間に渡って解消されないのに、神を信じるだけの貧乏生活を貫いて何の得があるのか、ということですね。

作品では、桶で水を浴びせかける妻の顔は侮蔑の面持ちです。
何もかも失った男には、もはや用はないとでも言いたげな表情です。


3. ヨブのその後


思い皮膚病に苦しむヨブは、内なる声に耳を傾ける日々を送っていました。
ある日、嵐の中から神が顕現しました。

神は次のように言いました。

「因果応報の理論だけで、全てが説明出来るわけではないのだ。」

ヨブは災いすらも神の支配下にあることを悟り、懺悔しました。
ヨブの祈りは、神に聞き入れられます。

その後、ヨブの皮膚病は癒えました。
そして従来の2倍以上の家畜を所有するようになり、子宝にも再び恵まれるようになりました。

結果的に試練を信仰の力でくぐり抜けたヨブには、以前を上回る豊かで幸せな人生が与えられたのでした。


4. 原題


アルブレヒト・デューラー(Albrecht Dürer)が描いた『妻によって嘲笑されるヨブ』は、ドイツ語ではHiob von seiner Frau verhöhntと言います。

Hiobが、ヨブです。

von Zは、受動態の行為者Zを表します。
従って、von seiner Frauは、彼の妻によって、という意味になります。

verhöhntは、verhöhnen(~を嘲る)の過去分詞です。

この作品は、ドイツ中西部の都市フランクフルト・アム・マイン市(Frankfurt am Main)にあるシュテーデル美術館(Das Städel)で見ることが出来ます。

Das Städelは、Städelsches Kunstinstitut und Städtische Galerieと呼ばれる場合もあります。




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