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ジョン・ウィリアム・ウォーターハウス『セイレン』
記事URL  カテゴリ | ギリシア神話絵画 | 2011年09月17日(土)00時14分 | 編集 |
2011年9月17日(土)


目次
1. サイレンの語源
2. 欲情するブテス
3. メディアの活躍
4. ブテスのその後
5. アプロディーテとのセックス
6. エリュクスの最期
7. 原題


今回取り上げる作品は、ジョン・ウィリアム・ウォーターハウス作『セイレン』です。

2011年9月17日ジョン・ウィリアム・ウォーターハウス『セイレン』521

1. サイレンの語源


イアソン一行は魔女キルケの住むアイアイエ島を後にして、一路イオルコスを目指します。
アルゴー船がメッシーナ海峡を通過する際に、セイレンたちが甘い歌声で誘いをかけて来ました。

セイレンとは、上半身が人間の女で、下半身は鳥の姿をしている海の怪物です。
彼女たちは、元々は怪物ではなく、冥界に連れ去られる前のペルセポネに仕えていたニンフでした。

ところが、主人であるペルセポネがハデスに誘拐された後は、特にすることもなく、ただただ悲しむだけの日々を送っていました。

その怠惰な暮らし方を見ていたアプロディーテは、恋愛やセックスに関心を持たず、泣いてばかりいるという生き方に憤りを感じます。

そして、罰として、彼女たちを怪鳥の姿に変えてしまったのでした。
こうして、怪物セイレンは誕生したのです。

なお、サイレンという語は、セイレンに由来すると言われています。


2. 欲情するブテス


セイレンは、カリュブディスやスキュラといった怪物が棲むメッシーナ海峡付近に出現し、その美しくも淫らな歌声で船乗りたちを惑わし、船を難破させることを日々の楽しみとしていました。

セイレン、カリュブディス、スキュラは、メッシーナ海峡を通過したい船乗りたちからすると迷惑な存在で、かつ手強い相手です。

特にセイレンは、男の性欲を刺激する甘い歌声で誘いをかけて来るため、ほとんどの男は勃起を抑制出来ず、仕事が手につかなくなります。

アルゴー船の乗組員の大半は、長旅の中でセックスに飢えていましたので、セイレンの淫らな声を耳にした瞬間、任務や使命などという高尚な意識は吹き飛んで、頭の中はセックスすることで一杯になって行きます。

女体に飢えていた乗組員の内、ブテスという男がセイレンの官能的な歌声に誘われて、いち早く船から海へと飛び込みます。

そして、一目散にセイレンたちのいるところを目がけて、泳いで行きました。

ブテスのしたことは職場放棄であり、イアソンに対する裏切り行為です。

しかし、職場を放棄したくなるぐらい、船上での生活には潤いがなく、癒しがなく、ブテスの性欲は爆発寸前で、セイレンの淫らな歌声に反応してしまったわけです。

まあ、ブテスの気持ちも、分からないではありません。


3. メディアの活躍


メディアはセイレンたちの本性を知っていましたので、他の船員たちが船から海へ飛び込もうとするのを制止します。

そして、オルフェウスに頼んで竪琴を弾いてもらいました。

ブテス以外の船員たちは、セイレンの淫らな歌声よりもオルフェウスの奏(かな)でる妙なる調べに耳を傾けるようになり、海へ飛び込むのを思い止まりました。

船の漕ぎ手たちが、性欲の高まりを抑制し、それぞれの持ち場でちゃんと役割を果たしたため、アルゴー船はメッシーナ海峡を無事に通過することが出来たのです。

もし、メディアがいなければ、多くの船員たちは高まる性欲を満たすことだけを考えて、ブテスのようにセイレンを追いかけて持ち場を捨てていたはずです。

メディアのおかげで、イアソンたちはメッシーナ海峡を通過出来たわけですね。

女神アテナは、イアソン一行がキルケのいるアイアイエ島に立ち寄る前に、今後メディアの存在が必要になるだろうと告げましたが、それは、こういう事態を想定しての発言だったわけです。

女の扇情的な声や態度に男は弱いですが、同性の女は、その扇情作戦の魂胆を見抜き、下心を見透かしているということですね。


4. ブテスのその後


イギリスの画家ジョン・ウィリアム・ウォーターハウス(1849-1917)は、セイレンに近づくために海を泳いで行ったブテスを描きました。

向かって右で、岩の上に座って全裸で楽器を持っているのがセイレンです。
向かって左で、海の中に入っているのがブテスです。

ブテスは本来であれば、この後、セイレンの魅力に取り憑かれて、セックス三昧(ざんまい)の日々を送り、やがては身を滅ぼすところでした。

労働もせず、思考もせず、ただセックスだけに明け暮れていれば、人間は破滅します。

セックスは確かに人にとって必要不可欠な行為ですが、適切な頻度を保つことが必要であり、24時間セックスだけをしていたのでは、その身は破滅します。

ブテスも破滅するはずだったのですが、ここで、アプロディーテが登場し、ブテスを助けることになります。


5. アプロディーテとのセックス


セックスの女神アプロディーテは、性交による快楽を否定する者を嫌悪します。
あるいは、セックスに対して無関心な者には、容赦無い制裁を加えます。

だから、ペルセポネを失って泣いてばかりいるニンフたちは、怪物セイレンの姿に変えられてしまったのでしたね。

一方、アプロディーテは、性交による快感を肯定する者は、積極的に受け入れます。

あるいは、セックスに対して強い関心を示す者には、男女を問わず、何らかの便宜供与をする場合もあります。

アプロディーテは、最も美しい女神でありながらも、常にお高く止まっているわけではなく、時には、男神以外の人間の男にも心と体を開き、自分自身もセックスを楽しむという側面があるのです。

もちろん、あくまでも、時には、という頻度ですけどね。
多くの男にとって、アプロディーテが高嶺の花であることには変わりはありません。

アプロディーテは、セックスに飢えたブテスを気に入り、セイレンの魔の手から逃れさせ、助けることにしました。

しかも、助けただけでなく、アプロディーテは、ブテスのペニスを我がものとしました。

ブテスは、セイレンとセックスするつもりで職場放棄したのですが、結果的には最も美しい女神とセックスすることになったのでした。

ブテスはアプロディーテに導かれてシチリア島へ上陸し、久方ぶりの女体を味わい、心置きなくアプロディーテの膣内に射精しました。

溜まりに溜まった精液を発射したブテスは、その相手がアプロディーテだったことで、天にも昇る心地だったでしょうね。

その後、ブテスとアプロディーテの間には、息子エリュクスが誕生します。


6. エリュクスの最期


アプロディーテが産んだエリュクスは、長じてシチリア王となりました。
この章では、エリュクスがヘラクレスと対決した話を述べます。

ヘラクレスは十番目の功業を成し遂げる過程で、ゲリュオンの牛たちを連れてイタリアに立ち寄ります。

ヘラクレスの十番目の功業については、2011年8月29日(月)の記事『フランシスコ・デ・スルバラン『ゲリュオンを打ち負かすヘラクレス』 loro2012.blog』を参照して下さい。

その際に、1頭の牛がヘラクレスの元を逃げ出し、海を渡ってシチリア島へと辿り着きます。
エリュクスは、この牛を気に入り、自分のものとします。

牛を探してシチリア島へとやって来たヘラクレスは、エリュクスに対して牛の返還を求めます。

エリュクスは、レスリングで勝った方がこの牛を所有するという話を持ち掛け、ヘラクレスもその提案に同意して、2人のレスリング対決が実現します。

この戦いで、シチリア王エリュクスはヘラクレスに敗れ、命を落とすことになります。


7. 原題


ジョン・ウィリアム・ウォーターハウス(John William Waterhouse)が描いた『セイレン』は、英語ではThe Sirenと言います。

この作品は、個人所蔵となっています。





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