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堺雅人主演映画『ゴールデンスランバー』を見た感想
記事URL  カテゴリ | 日本映画 | 2013年05月12日(日)15時22分 | 編集 |
2013年5月12日(日)


目次
1. 無神経なマスコミ
2. 美形への嫉妬
3. ねじれた心の持ち主は誰か?


1. 無神経なマスコミ


5月8日(水)にWOWOWプライムで、堺雅人主演の映画『ゴールデンスランバー』をやっていました。

題名のゴールデンスランバーは英語のGolden Slumberを指し、直訳は黄金のまどろみとなります。

映画の中で堺が演じる青柳雅春は睡眠薬が入ったペットボトルの水やカップヌードルを、そうとは知らずに飲んだり食べたりして、しばしのうたた寝の後、目覚めたら状況が一変しているという場面が描かれていましたが、映画の主題とスランバー(安らかに心地良く眠ること)との間には決定的な相関関係はないように思いました。

映画の原作は伊坂幸太郎の小説『ゴールデンスランバー』です。

私は小説を読んでいませんが、映画が原作本に沿ったものだとすれば、伊坂幸太郎が訴えたかった主題は真偽の検証もせず、容疑者を犯罪者に仕立て上げていく警察とマスメディアの横暴だろうと思います。

主人公・青柳雅春は仙台市内で発生した首相暗殺事件の犯人であると警察から断定され、警察発表を伝達するマスコミから「容疑者=真犯人」という扱いを受けます。

青柳は逮捕されたら執拗かつ暴力的な尋問を受け自由が奪われ、やってもいないのに「私がやりました」と自白させられる可能性が高いので逃亡生活を送ることにします。

警察の追跡から逃れる中で学生時代の仲間や前勤務先の先輩社員、あるいは正体不明の人物などから協力を得て辛うじて仙台市内に潜伏することに成功します。

容疑者が逃亡中という事態はマスコミにとって好都合な事態であり、いつどのような形で容疑者が逮捕されるのかにマスコミの関心が移ります。

もはやこの時点で、容疑者・青柳が真犯人であることが確定したかのような報道がなされ、マスコミ報道を真に受ける庶民は青柳を首相暗殺の実行犯であると認識しています。

そんな中、伊東四朗が演じる青柳雅春の父は実家のある埼玉まで押しかけた報道陣に対して、「お前らのやっていることは、他人の人生を狂わせるかも知れないんだ。」という発言をして、無神経な質問を浴びせかける報道陣を無視する格好で取材カメラを通して息子に語りかけ、「私と母さんは、お前の無実を信じている。」と述べます。

名優・伊東四朗の見せ場となっている感動的な場面です。

この父親が怒りを込めて述べた「無分別な報道によって、人生を台無しにされる人がいる」という事実の存在こそが、この映画が最も訴えたかったことなのだろうと思いました。


2. 美形への嫉妬


容疑者となった青柳は堺が演じているので美男子であり、さらには数年前に女性芸能人の危機を救った英雄としてマスコミに取り上げられたこともある「ちょっとした有名人」という設定です。

男女を問わず、世の中の多くの人は外見に恵まれた者が嫌いですし、英雄扱いされている者を憎みます。

従って青柳のような「勝ち組」の人物が殺人犯に仕立て上げられ、逃亡して寝食に困るような状況になっていることを人々の多くは内心では喜んで傍観しているわけですね。

世間は真偽などどうでも良いわけです。

結局マスコミや警察の横暴は一般社会で暮らす人々の歪んだ価値観を反映したものであり、ババ抜きのババを誰が引くのかということが世間の最大の関心事なわけです。

青柳は心ある人々の協力によって警察に逮捕されることはなかったので、逮捕後に待っていたはずの人を人とも思わない尋問を受ける事態は免れたのですが、「逃亡中の容疑者は、警察によって射殺された。」という誤った報道が世の中を駆け巡ることになり、別の面で大きな代償を払う羽目になりました。

そのあたりについては、映画の最終盤をご覧下さい。


3. ねじれた心の持ち主は誰か?


美しく生まれ不断の努力によってその美しさを維持し勤勉を通じて栄光を手に入れた者を、なぜ「一般人」はそんなにまでして引きずり下ろしたがるのでしょうか?

そんな「怠惰な一般大衆」を軽蔑する視線が、この作品の随所に織り込まれていると感じました。

私も自らの努力を放棄し勤勉とは程遠い生活を送る一方で、成功者の足を引っ張ることには精を出す「大衆」という存在は嫌いですね。

主演の堺が示す抜群の演技力のおかげで、2時間20分の上映時間が短く感じられました。
警察論やマスコミ論あるいは大衆論を学びたい人には必見の映画です。


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