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Hendrick van Balen『カリュプソの客となるオデュッセウス』
記事URL  カテゴリ | ギリシア神話絵画 | 2012年03月12日(月)23時39分 | 編集 |
2012年3月12日(月)


目次
1. ヘリオスの神罰
2. 海の女神カリュプソ
3. 食事とセックス
4. 『週末婚』スペシャル版で描かれていた世界
5. カリュプソが侍女たちにセックスを禁じた理由は何か?
6. 女性にとって、究極の秘密兵器は何か?
7. 原題


今回取り上げる作品は、Hendrick van Balen作『カリュプソの客となるオデュッセウス』です。

2012年3月12日Hendrick van Balen『カリュプソの客となるオデュッセウス』222

1. ヘリオスの神罰


オデュッセウス一行は、怪物セイレンが棲む海域を、無事に通過しました。

さらに、メッシーナ海峡に棲む怪物カリュブディスとスキュラも辛うじてかわして、無事に通過しました。

その後、一行は、太陽神ヘリオスの島と呼ばれるトリナキエに停泊して、ひと休みします。
トリナキエ島は、現在のシチリア島に同定されています。

オデュッセウスの部下たちは、セイレンやスキュラなどの怪物たちと海上で相対(あいたい)した後、ようやく、陸に上がることが出来て、極度の緊張感から解放されました。

トリナキエ島には、太陽神ヘリオスが飼っている牛がたくさんいました。

オデュッセウスは部下たちに対して、この牛たちには、絶対に手を出してはいけないと、厳命していました。

しかし、彼らは、気の緩みからか、牛を1頭捕まえて丸焼きにし、食べようとしたのでした。
オデュッセウスが部下たちの動きに気づいた時には既に手遅れで、ヘリオスの神罰が下りました。

焼いた肉は中に浮き、部下たちは一口も食べることは出来ません。

気味悪くなった一行は、すぐにトリナキエ島を離れますが、間もなく大時化(おおしけ)となり、せっかく通過したカリュブディスの方へと、船が戻されて行きます。

その後、部下たちはカリュブディスに飲み込まれ、命を落としました。


2. 海の女神カリュプソ


オデュッセウスは、海上で荒らしに遭い、船が難破し、たった一人で、やっとの思いでオギュギア島に漂着しました。

オギュギア島は、地中海の西端にあったという説もありますが、諸説あり、はっきりしません。

オギュギア島には、海の女神カリュプソが暮らしています。
そこへ、オデュッセウスが息も絶え絶えの状態で、辿り着いたのです。

カリュプソを始めとする島の美女たちは、部下や船を失った傷心のオデュッセウスを、丁重にもてなします。

彼女たちは、食事や酒、あるいはマッサージやセックスなどの、この世の全ての快楽をオデュッセウスに与えました。

但し、オデュッセウスとセックスをしたのは、オギュギア島の女主人であるカリュプソだけです。

カリュプソは、侍女たちがマッサージをするために、オデュッセウスの逞しい体に触れることまでは許しましたが、セックスは禁じました。

オデュッセウスのペニスは、カリュプソが独り占めしたわけですね。

いつの時代でも、どの民族でも、性別に関わらず、最高権力者は、最高の快楽を独り占めしたがるものなのです。


3. 食事とセックス


フランドルの画家Hendrick van Balen(1575-1632)は、カリュプソから歓待を受けているオデュッセウスを描きました。

画面中景中央の向かって左で、椅子に腰掛けて、青い布を身につけているのがカリュプソです。
カリュプソに向い合って座り、緑色の布を腰に身につけているのがオデュッセウスです。

画面前景中央には、沢山の魚が描かれています。

向かって左の女性たちは、籠一杯の果物をテーブルへと運ぼうとしています。
向かって右の女性たちは、山菜を採っているところですね。

オデュッセウスは、命からがら到着した島で、「食事とセックス」という男にとって最も必要な要素を、カリュプソから与えられました。


4. 『週末婚』スペシャル版で描かれていた世界


話は変わりますが、1999年10月に、TBSで『週末婚』スペシャル版が放送されました。

元々は、連続ドラマ『週末婚』として、お互いの不幸を願う姉妹を軸に、6人の男女の愛憎劇が描かれていて、永作博美、松下由樹、仲村トオルなどが出演していました。

連続ドラマ終了後に放送された、単発のスペシャル版では、菅野美穂が出演者に加わり、一騒動を引き起こします。

その菅野が演じる秋田の女性・杉江は、仲村が演じる航一と愛人関係になります。
航一の妻・月子は、永作が演じていて、夫が愛人を作ったことを知り、杉江と対峙します。

月子から見れば、杉江は冴えない田舎者で、方言丸出しの「価値の低い」女です。

「そんな女と、なぜセックスをしているのか」と、月子は夫・航一に対して、半ば呆れながら尋ねます。

すると、航一は真顔で、「めしと体が良いから。」と答えるのです。

つまり、永作が演じる妻・月子は美人で、世間的には「価値の高い」女と見られているかも知れませんが、夫からすると、妻は、食事の世話もしてくれないし、セックスの相性も合わない、と言っているわけです。

一方、菅野が演じる杉江は、自身が世間的に「価値が低い」女であることを自覚していて、だからこそ、「めしと体」だけは常日頃から磨いておくように、という母親の助言を素直に受け入れ、その2つだけを磨きに磨いて生きて来たのです。

妻との食事やセックスにうんざりしていた夫は、料理において抜群の腕前を示す愛人・杉江に惚れ込みます。

その上、杉江は、セックスに対して協力的というよりは積極的な女であり、セックスの技術が素晴らしいだけでなく、セックスの最中に、男に自信を持たせる言葉をいくつも用意しているのです。

月子のように、外部から見て申し分のない妻であっても、当事者の夫からすると、「飯と体」に関して不十分な能力しか備えていないのでは、愛のある生活を長く続けることは出来ないと、これが、脚本家・内館牧子の伝えたいことだったようです。


5. カリュプソが侍女たちにセックスを禁じた理由は何か?


話が逸れましたが、遠いギリシア神話の時代から、女が男を虜にする究極の方法は、「メシと体」であり、男の立場でこの事実を否定できる者はいないと思われます。

そして、恐らく、女性自身も薄々はそのことに気づき、食事とセックスの腕前を上げなければと、頭の中では考えているのだろうと思います。

ところが、残念ながら、全ての女性が、料理が上手いわけではありませんし、フェラチオが得意なわけでもありません。

そうすると、結婚しているにせよ、恋愛関係にせよ、男は、料理下手でフェラチオ下手な女性にはいずれ飽き、その分野に磨きをかけた女性と知り合った場合、容易に心を奪われていくわけです。

カリュプソは、そうした男の特性を知っているので、侍女たちには絶対にオデュッセウスとセックスをさせなかったわけですね。

なぜなら、侍女の中で自分よりもフェラチオが上手い女がいた場合、オデュッセウスの心はその女へと傾いて行くのが分かっているからです。


6. 女性にとって、究極の秘密兵器は何か?


恋愛に限らず、どんな出来事であっても、相手がいなければ成立しません。

仲村が演じる男が、秋田へ単身赴任となり、菅野が演じる女性と知り合わなければ、何も起きないわけです。

夫・航一が赴任先で知り合った女性が、たまたま「飯と体」に磨きをかけた女性だったことが、永作が演じる妻・月子にとっては、不運だったのです。

なぜなら、そうそう、「飯と体」に磨きをかける女など、存在しないからです。

学歴や語学力、あるいは仕事上の技術を磨くために、資金と時間と努力を惜しまない女性は多いと思いますが、男が最も必要とする「飯と体」を磨くことに関心を示す女性は、それほどたくさんはいないのではないかと思います。

オデュッセウスとカリュプソの人間関係を見て、そんなことを思いました。


7. 原題


Hendrick van Balenが描いた『カリュプソの客となるオデュッセウス』は、英語ではOdysseus as a Guest of the Nymph Calypsoと言います。

この作品は、ウィーン美術アカデミー(Akademie der bildenden Künste Wien)で見ることが出来ます。


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