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ローレンス・アルマ=タデマ『テピダリウム』
記事URL  カテゴリ | その他絵画 | 2010年12月14日(火)15時17分 | 編集 |
2010年12月14日(火)


目次
1. ヴィクトリア女王の時代
2. 男性的な女体
3. 原題


今回ご紹介するのは、ローレンス・アルマ=タデマ作『テピダリウム』です。

2010年12月14日ローレンス・アルマ=タデマ『テピダリウム』234

1. ヴィクトリア女王の時代


ローレンス・アルマ=タデマ(1836-1912)は、オランダ人の画家です。

結婚後パリで暮らしていましたが1870年に普仏戦争が勃発したため、その戦禍を避けるためにロンドンへ移住します。

歴史的な主題を写実的に描く手法がヴィクトリア女王(在位:1837-1901)治世下のイングランドで認められ、ロンドンを創作活動の拠点としました。

ヴィクトリア女王の時代は産業革命によって経済が飛躍的に発展し、イギリス帝国の絶頂期と看做(みな)されています。

富を獲得した一般大衆は展覧会へ足繁く通うようになり、才能ある画家たちが広く世の中で認められる土壌が形成されていきました。

ヴィクトリア(1819-1901)が生まれた頃のイングランド宮廷は、後のジョージ4世(在位1820-1830)が父王ジョージ3世(在位1760-1820)の摂政として政務を司っていた時期でした。

この皇太子ジョージによる摂政期(1811-1820)を、「the Regency」と呼んでいます。
ジョージの享楽的な性格を反映して、国家全体が退廃的な空気に包まれていました。

その反動もあってヴィクトリアが即位した後のイングランドは、比較的道徳的な価値観が大勢を占めるようなりました。

ただ、そうは言ってもローレンス・アルマ=タデマ(Lawrence Alma-Tadema)の作品に見られるような官能的表現は、受容されていたということになりますね。


2. 男性的な女体


作品の題名となっているテピダリウムとは、古代ローマの時代に使われていた微温浴室を指します。
微温浴室とは、聞き慣れない言葉かも知れません。

公衆浴場の中にあった施設の一種で、今で言う床暖房システムによって体を温めることが出来る空間という理解でいいと思います。

その微温浴室において、女性が体を温めている場面を描いたのがこの作品です。
有り体に言うと、物足りないですよね。

官能的な表現が施されているとは言え、首から上だけを見ればモデルは男性のようにも見えますし、胸・腰・腕は決して肉感的とは言えません。

現代のファッションモデルに憧れる女性たちは、このような肉体を美しいと考えるのかも知れません。

しかし、膨(ふく)よかな肉体を有する女神たちの裸体を美の規範として取り上げてきた私としては、残念ながらあまり感じるものはないと言わざるを得ません。


3. 原題


『テピダリウム』は、英語ではThe Tepidariumと表記されます。

この作品は、リヴァプール国立美術館(National Museums Liverpool)の一角を成すLady Lever Art Galleryの所蔵となっています。




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