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フラ・アンジェリコ『聖母戴冠』
記事URL  カテゴリ | その他絵画 | 2010年07月16日(金)14時56分 | 編集 |
2010年7月16日


ラジオでの放送日:2009年11月6日(金)、7日(土) 
講座名:イタリア語で”聴く”ルネサンスの名画 講師:松浦弘明

第6週 国際ゴシック様式と初期ルネサンス様式のはざまで ーフラ・アンジェリコの独自性ー
目次
1. 修道士
2. ゴシック様式の特徴
3. 衣の襞(ひだ)
4. 原題
5. ルーヴル美術館の『聖母戴冠』


フラ・アンジェリコは数点の『聖母戴冠』を描いているのですが、この第6週で取り上げられたのは下掲の絵画です。

2010年7月16日フラ・アンジェリコ『聖母戴冠』1 367

1. 修道士


フラ・アンジェリコはイタリア語で書くとFra Angelicoとなります。
このfraは修道士の前につける呼称で、il frate(修道士)という語の語尾(te)が削除された形です。

つまり、作者であるフラ・アンジェリコは第4週で扱ったロレンツォ・モナコ同様、カトリック教会の修道士であったということになります。

ロレンツォ・モナコの時にも言及しましたがフラ・アンジェリコも修道士である以上、聖母子を現実世界の人間として描くことには積極的ではありません。

イエスと聖母の周りを囲んでいる天使たちも、理想化された姿で描かれていますよね。

修道士である画家がこういった現実離れした描き方を好むというのは、聖職者として日々神に仕える彼らの限界と言えるかも知れません。


2. ゴシック様式の特徴


中央に位置するイエスやマリアも含めて、全体的に登場人物は細長く描かれていますよね。

対象となる人や物を縦長に描くというのはゴシック様式の特徴なんですが、この画風から優美さを感じるという人が多いです。

さらに多彩な色使いもゴシック様式の特徴と言えます。

赤と青を基調としていますが、緑、黒、白といった数種類の色彩を用いて理想化された天上界を表しています。

また登場人物の足を描かないのも、非現実性を強調する一つの要素になっているわけです。


3. 衣の襞(ひだ)


1) 優美な理想化


フラ・アンジェリコ(1387-1455)とロレンツォ・モナコ(1370年頃-1425)は、ほぼ同時代を生きた画家であり、かつ修道士でもありました。

聖職者という立場上、聖母子や天使たちを写実的に描くことはせず、ある程度理想化した姿で描くことを志向したという共通点を見い出すことが出来ます。

しかし一方では、フラ・アンジェリコの画風がロレンツォ・モナコと明らかに異なる点もあるのです。
それは空間の3次元性と人体の彫像性です。


2) 立体的な空間描写


『聖母戴冠』の前方に位置する人物たちの寸法と、後方に位置する人物たちの寸法は明らかに異なっています。

後方で楽器を演奏している天使たちは、表情の判別が出来ないぐらい小さく描かれていますよね。
これにより、絵画を見る者に奥行きを感じさせる効果が生み出されているわけです。


3) 写実的な明暗


さらには、マリアとイエスの身につけている衣装の襞(ひだ)に、ある程度の写実性が認められます。
衣装に明暗を施すことによって、その下に隠れている肉体の存在が際立つことになるのです。

聖母子像を完全に理想化するのであれば、このような描き方は不要のはずです。
この辺りがロレンツォ・モナコの画風との相違点と言えるでしょう。

4. 原題


『聖母戴冠』はイタリア語ではIncoronazione della Vergineと言います。

Incoronazioneが戴冠、la Vergineが聖母マリアという意味ですね。


5. ルーヴル美術館の『聖母戴冠』


フラ・アンジェリコの描いた別の『聖母戴冠』はルーヴル美術館に展示されています。

2010年7月16日フラ・アンジェリコ『聖母戴冠』2 385


上掲の画像も遠近法を使って空間の描写がなされていますよね。
1430年頃の作品です。

フランス語で『聖母戴冠』は、Le Couronnement de la Viergeと言います。





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