映画とドラマと語学
| ホーム loro2012 |
| 投稿 |
ジェイムズ・ティソート『兄弟に夢を解き明かすヨセフ』
記事URL  カテゴリ | 旧約聖書絵画 | 2012年06月30日(土)20時40分 | 編集 |
2012年6月30日(土)


目次
1. 生意気なヨセフ
2. ガリ勉は悪なのか?
3. 言葉を飲み込むしかないのか?
4. 原題


今回取り上げるのは、ジェイムズ・ティソート作『兄弟に夢を解き明かすヨセフ』です。

2012年6月30日ジェイムズ・ティソート『兄弟に夢を解き明かすヨセフ』242

1. 生意気なヨセフ


作品の題名になっているヨセフとは、ヤコブの息子です。
系譜を示します。

テラ→アブラハム→イサク→ヤコブ→ヨセフ


ヨセフは、父ヤコブや同母弟のベニヤミン、異母兄たちと共にカナンの地で暮らしていました。

才気煥発で生意気なところがあったヨセフは、異母兄たちを挑発するような発言を、日頃から繰り返していました。

ヨセフが夢で見た話をする時でも、兄たちが自分にひれ伏したというような内容を、得意になって喋り続けます。

いくら夢の中の話とは言え、年上の兄たちを従えるかのような発言をすれば、反感を買ってしまいます。

人間には誰しも、嫉妬心や憎しみという感情があることに、若いヨセフは思いが至らないのです。

知性の低い者は、自分に知性がないことは承知していますので、憎しみを晴らすためには、知力以外の手段を用いて、知性の高い者を挫折させようと画策するわけです。

その最たるものは、暴力ですね。

人の上に立つには、知性を磨くことも重要なのですが、人間の本質を理解し、それを踏まえた上で、心を磨くことがそれ以上に重要なのです。

そして、心は言葉に表れます。

人間の本質を掴んでいないヨセフは、その知性の高さが裏目に出て、後に、辛酸を嘗めることになりますが、まだヨセフはそのことを知りません。

ナント生まれの画家ジェイムズ・ティソート(1836-1902)が描いているのは、少年ヨセフが兄たちに、夢で見たことの意味を話している場面です。


2. ガリ勉は悪なのか?


一般論として、知性の高い者が、知性の低い者から尊敬を得られるかというと、必ずしもそうではありません。

なぜなら、知性の高い低いに関わらず、人間には、感情や欲望が等しく備わっていて、その感情や欲望を高圧的な方法で封じ込められると、反発心が芽生えるからです。

反発心は、やがて敵意へと変貌しますので、敵愾心(てきがいしん)を抱いた者の心の中には、もはや相手を敬う気持ちが生じる余地はなくなります。

一方、知性の高い者の立場からすると、知性の低い者は、努力も我慢もせず、実力もないくせに、知性の高い者に対して反発ばかりしている、と映るわけですね。

概して、この世は無能で怠惰な者の方が多い、と言えるでしょう。

無能だから怠惰になるのか、怠惰だから無能になるのか、どちらが先かは分かりませんが、いずれにしても、そんな者たちに、価値を生み出すような建設的な人生など、手に入る訳がありません。

そして、そうした無能で怠惰な者たちは、有能で勤勉な者に対して従順なのかというと、決してそうではなく、どちらかというと、ひねくれた態度を取る者が大半です。

無能で怠惰な者たちは、勤勉に生きた経験がないので、勤勉であり続けることがどれほど苦しいか、を理解できません。

そして、あろうことか、有能で勤勉な者が目障りとなり、彼らを引きずり下ろすことを、人生の目的とします。

しかし、それが、人間の本質なのです。

中学校や高校において、勤勉な生徒を「ガリ勉」呼ばわりし、勉強することなど無意味だと持論を展開する生徒がいますが、人間は、すでに10代で、有能で勤勉な者が目障りになっていることの証左ですね。


3. 言葉を飲み込むしかないのか?


私がブログを書く目的は、一つには、人間の本質を解き明かすことにあります。

私の書いていることが全て正しい、と押し付けるつもりはありませんが、若い読者の皆さんには、知性や体力などを高める努力に勤(いそ)しむ以外に、人間の本質を追求する努力も怠らないことを願っています。

ギリシア神話や聖書は、そのための格好の教材となります。

ギリシア神話や聖書を学んだ私が、若い読者のあなたに言えることは、結局、あなたの人生を左右するのは、知的水準の高さや技術の優秀さではなく、人間の本質を理解した上での言動が出来るかどうか、にかかっているということです。

平たく言うと、言いたいことの半分は、胸の中に収める、ということですね。
ただし、代弁者としての立場にいるのであれば、言うべきことは、言わなければなりませんが。

有能で勤勉な者が身に付けるべき真の実力とは、自分よりも優秀な者から信頼を得ること、そして、自分よりも劣る者には希望を与えること、だと言えるでしょう。

それが出来そうもないのなら、凡庸な人生を選択する方が良いかも知れません。

なまじの知識だけを頼りに革命騒ぎを起こして、火炎瓶を投げつけ、人々の社会生活を乱すことしか出来ない者よりは、平凡で我慢強く、地に足をつけた人生を送る人の方が、尊いと思っています。


4. 原題


ジェイムズ・ティソート(James Tissot)が描いた『兄弟に夢を解き明かすヨセフ』は、英語ではJoseph Reveals His Dream to His Brethrenと言います。

brethrenは、brotherの古語複数形です。

なお、ジェイムズ・ティソートは、James Jacques Joseph Tissotという名前で表記される場合も多いです。

この作品は、ニューヨークにあるユダヤ美術館(The Jewish Museum of New York)で見ることが出来ます。





関連記事