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ティントレット『スザンナの水浴』
記事URL  カテゴリ | 旧約聖書絵画 | 2013年07月02日(火)21時35分 | 編集 |
記事のタグ: 美術史美術館
2013年7月2日(火)


目次
1. 巡回裁判の長老
2. ティツィアーノの弟子
3. 原題


今回取り上げる作品は、ティントレット作『スザンナの水浴』です。

スザンナ 253


1. 巡回裁判の長老


『スザンナの水浴』は旧約聖書『ダニエル書補遺』に記された物語です。

ダニエルは第2回のバビロン捕囚(紀元前586年)で、メソポタミア地方の古代都市バビロンへと強制連行された人物です。

『スザンナの水浴』の舞台はバビロンです。

バビロンのユダヤ人社会の中にヨアキムという裕福な男性が住んでいました。
ヨアキムにはスザンナという貞淑な美人妻がいました。

ヨアキムの屋敷は広大で美しい庭園もありました。
ヨアキムは人柄にも優れ、彼の家には多くのユダヤ人達が自然と集まるようになっていきました。

ヨアキム邸では巡回裁判も行われるようになりました。
巡回裁判とは裁判官がしかるべき場所に移動して即決の裁判を行う形態を指します。

当時は裁判所と呼ばれる施設があちらこちらにある時代ではありません。

そこでヨアキム邸のような広大な敷地を利用して、裁判官がそこへ出向いて審理を行うという形を取っていたわけです。

ある日、ヨアキム邸に巡回裁判官を務めている長老二人がやって来ます。
夕方まで続いた審理を終えて長老二人は帰りしなに庭園の傍を通りました。

庭園の中からは水浴びする音が聞こえて来ます。
長老たちは劣情を抑え切れずに、水浴びの音がする方へと歩み寄ります。

すると、ヨアキムの妻スザンナが一人で水浴をしている姿が目に飛び込んで来ました。

ティントレット(1518-1594)は美人妻が水浴している艶めかしい姿を長老二人が息を潜(ひそ)めて覗き見する様子を描いています。

長老たちはスザンナにバレないように、衝立(ついたて)の手前と奥の二手に分かれて覗き見をしていますね。
悪知恵が働く好色老人たちです。

この時点ではスザンナはまだ長老たちの存在には気づいていません。


2. ティツィアーノの弟子


作者のティントレットは、師匠であるティツィアーノ(1490頃-1576)とともに16世紀のヴェネツィアで活躍したルネサンス期の画家です。

スザンナの首から下は小さな顔とは不釣合いなぐらいの官能的な描写がなされています。

左耳の火照り具合によって艶(なま)めかしさがより一層強調されています。
さらに股間の描き方については、かなり踏み込んだ表現をしているという印象を受けますね。

老境に入った男が寝そべってでも人妻の熟れた肉体を見たいという浅ましい姿が巧みに表現されています。

男がスザンナの色香に迷って道を踏み外すのは全て男の側の責任です。
容色に優れたスザンナには何ら落ち度はありません。

確かにスザンナは豊麗な腰回りや太腿を惜しげも無く晒(さら)しています。
しかし、人払いをした上で自宅の庭で水浴をしているスザンナには一切過失はないわけです。

続きます。


3. 原題


ティントレット(Tintoretto)が制作した『スザンナの水浴』は、イタリア語ではSusanna e i vecchioniと言います。

il vecchioは老人という意味ですので、vecchioniはそこから派生した語で老人たちという訳が当てられます。

ドイツ語では、Susanna im Badeと言います。

das Badは入浴という意味です。
この作品はウィーンにある美術史美術館(Kunsthistorisches Museum)の所蔵となっています。




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