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ミケランジェロ・メリージ・ダ・カラヴァッジオ『ホロフェルネスの首を斬るユーディット』
記事URL  カテゴリ | 旧約聖書絵画 | 2013年07月28日(日)19時38分 | 編集 |
2013年7月28日(日)


目次
1. ユーディットとは誰か?
2. 正義の行為
3. バロックの巨匠
4. 腰が引けるユーディット
5. 原題


今回取り上げる絵画は、ミケランジェロ・メリージ・ダ・カラヴァッジオ作『ホロフェルネスの首を斬るユーディット』です。

ミケランジェロ・メリージ・ダ・カラヴァッジオ『ホロフェルネスの首を斬るユーディット』249


1. ユーディットとは誰か?


カラヴァッジオの作品は、衝撃的な場面を描いていますよね。
剣を持っている女性がユーディットで、首を切られている男がホロフェルネスです。

ユーディット(ユディトと表記される場合もあります)とは、旧約聖書外典に登場するユダヤ人女性です。
外典というのは、聖書の正典に加えられなかった文書を指します。

旧約聖書外典に記載されているユーディットについて簡単に説明すると・・・、

ホロフェルネスは、ユダヤ人の暮らす土地に攻撃を仕掛けて来た敵軍の司令官でした。
ユダヤ側は降伏寸前まで追い込まれるのですが、その窮地を救ったのが寡婦であるユーディットでした。

彼女はユダヤ民族の生活を守るため自らホロフェルネスの元に赴き、女の武器を最大限に利用して敵軍の司令官を籠絡することに成功します。

ユーディットの肉体を貪(むさぼ)るように愛したホロフェルネスが満足して眠りについた後、ユーディットは敢然と当初の目的を果たします。

『ホロフェルネスの首を斬るユーディット』で描かれている場面は、一見すると残酷な行為に見えますが、実はユダヤ民族の安全を守るために自ら立ち上がった才知縦横の女性を表現しているわけです。


2. 正義の行為


このユーディットの殺人行為は、なぜ正当化されるのでしょうか?
そのことを象徴的に表しているのが剣です。

ユーディットが右手に握っている剣には、十字の柄が描かれています。

柄の半分はホロフェルネスの顔で隠れる構図になっていますが、右半分が正義の証拠として表現されていますよね。

このユーディットの行為は神の意志に沿ったものであり、ユダヤ民族を救うためには避けては通れない殺人であったことを示しているわけです。


3. バロックの巨匠


カラヴァッジオ(1571-1610)は、ミラノに生まれた画家です。

ラファエロ・サンティ(1483-1520)たちが完成させたルネサンス芸術を継承しながらも、明暗の対比や躍動感溢れる構図などを特徴とするバロック様式の先駆者として位置づけられています。

生来の凶暴性が原因で最終的には殺人を犯し逃亡生活の果てに病死するという人生でしたが、彼の才能は生前から高い評価を受けていました。


4. 腰が引けるユーディット


背景の黒とは対照的に、ユーディットには強烈な光が当たっています。
猛者の首を掻き切るという残虐な行為を自ら行いながらも、ユーディットの腰は引けています。

眉間には縦皺が寄せられ、首切りという行為に対して嫌悪感を抱いている様子が見て取れますよね。

ただ、天才カラヴァッジオにしては物足りないと感じるのは血の吹き出し方です。
この描写では、とても鮮血が迸(ほとばし)る様子が描かれているとは言えないですよね。

出血というよりは何だか太い糸のような印象を受けるのですが、いかがでしょうかね?

また右端に描かれている老婆は、切り落とされた後の首を入れるための袋を両手で持って立っているのですが、傍観者のような雰囲気が感じられます。

主役であるユーディットは怖気付きながらも民族の安全のために一大決心をして実行行為に及んでいる最中です。
にも関わらず特に手伝うでもなく、側で見ているだけ・・・。

あまり緊張感というものが感じられない老婆の姿が描かれています。

いずれ紹介するアルテミジア版の『ホロフェルネスの首を斬るユーディット』と見比べると、その緊張感の違いというものが実感出来ると思います。


5. 原題


カラヴァッジョ(Caravaggio)が制作した『ホロフェルネスの首を斬るユーディット』は、イタリア語ではGiuditta che taglia la testa a Oloferneと言います。

Giudittaはユーディット、Oloferneはホロフェルネスのことです。

tagliare ZはZを切るという意味で、la testaの語義は頭です。
ここでは首という意味合いで使われています。

この作品はカラヴァッジオが1598年頃に制作した作品で、現在はローマにあるバルベリーニ宮殿の国立古代美術館(Galleria Nazionale d'Arte Antica. Palazzo Barberini)の所蔵となっています。




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