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アルテミジア・ジェンティレスキ『ホロフェルネスの首を斬るユーディット』
記事URL  カテゴリ | 旧約聖書絵画 | 2013年08月02日(金)16時37分 | 編集 |
2013年8月2日(金)


目次
1. 強姦されたアルテミジア
2. 許すまじ!
3. 原題


今回取り上げる作品は、アルテミジア・ジェンティレスキ作『ホロフェルネスの首を斬るユーディット』です。

アルテミジア・ジェンティレスキ『ホロフェルネスの首を斬るユーディット』429


アルテミジア・ジェンティレスキは、同じ題材でこの作品以外にもう1点描いています。
この作品は、便宜上『青い服のユーディット』と呼ぶことにします。


1. 強姦されたアルテミジア


アルテミジア・ジェンティレスキ(1593-1653)は、カラヴァッジオ(1571-1610)とだいたい同じ時期を生きた女流画家です。

彼女の父親も画家で、父娘共にカラヴァッジオ的な画風を得意としていました。

アルテミジア・ジェンティレスキが『青い服のユーディット』を描いたのは、1613年頃と推定されていますので、二十歳前の作品かも知れません。

この絵画を描く契機となったのは、本作品が完成する数年前に起きた強姦事件です。
被害者はアルテミジアです。

アルテミジアは、父の工房で働いていた先輩画家タッシに手込めにされました。
そして、その屈辱を晴らすため父と共に裁判で争った、という経歴を持っています。

裁判においてタッシは、合意があった上での性交渉だったと述べています。
また、アルテミジアは既に「経験済み」であった、ということも申し立てています。

真相は誰にも分かりません。
知っているとすれば、アルテミジアだけです。

ただ、女性側が被害を受けたと主張している以上、男の側は弱い立場にありますよね。
これは、いつの時代でも同じだと思います。

しかし、このタッシという男は、同情を受けるに足るような品行方正な人物ではありません。
様々な刑事事件をその生涯で引き起こしていて、いわゆる「ワル」だった男です。

まあ、女性特有の価値観によって、生真面目で退屈な男よりは、そういう「ワル」に心惹かれてしまうという部分もあるのかも知れません。

一概にタッシを非難したり、アルテミジアを擁護したりすることは出来ないと思います。
男女の問題、特に性交渉の問題を論じるのは、困難ですよね。

性交渉の事実が存在したか否かということは、客観的に証明出来るかも知れません。

しかし、セックスに臨む際の両者の心がどうであったのかという問題は、第三者には結論づけることは不可能だと思います。

その不可能であるということを前提として、『青い服のユーディット』をもう一度ご覧になって下さい。


2. 許すまじ!


カラヴァッジオ版のユーディットは、うら若き乙女という印象もありました。
一方、アルテミジア版のユーディットは、成熟した大人の女性として描かれています。

旧約聖書外典では、ユーディットは未亡人という設定になっています。
従って、ユーディットという女性に対する解釈としては、アルテミジアの方が正しいのかなという気もします。

ユーディットが右手に握っている剣には、はっきりと十字が描かれていますよね。

この殺人は神の指示により行う正義の行為であることを、アルテミジアはカラヴァッジオ以上に強調する意図が感じられます。

カラヴァッジオの描くユーディットは、経緯が何であれ、人を殺すことに対して嫌悪感を抱いていました。

また、こういった騙し討ちのような形で残虐行為を行うことに対して、心情としては前向きではなかった様子が表現されていました。

ところが、『青い服のユーディット』には、ホロフェルネスを殺すにあたり、臆するところなど微塵も感じられません。

むしろ、積極的に憎き敵の首を取りに行っています。

そして、補佐をする侍女も主人の意向を十分に理解し、全力で協力体制に入っています。

この二人の女性の姿から感じられる気迫は、もちろん、ユダヤの民を外敵から守らなければならないという責任感が源になっています。

しかし、絵画を見ている私たちは別のことを想像します。

このユーディットは、アルテミジア自身でしょう。

そして、喉元を掻き切られて断末魔の苦しみを味わっているホロフェルネスには、強姦魔のタッシが投影されているわけです。

女の心と肉体を踏みにじる男は、絶対に許さない!!

アルテミジアの強い意志が感じられます。
この作品を見る限り、強姦されたアルテミジアには、一切非がなかったのかも知れないと思います。

続きます。


3. 原題


アルテミジア・ジェンティレスキ(Artemisia Gentileschi)が制作した『ホロフェルネスの首を斬るユーディット』は、イタリア語ではGiuditta che taglia la testa a Oloferneと言います。

この作品は、ナポリにあるカーポディモンテ美術館(Museo di Capodimonte)で見ることが出来ます。




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