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リチャード・ギア主演映画『ジャック・サマースビー』を見た感想
記事URL  カテゴリ | 外国映画 | 2013年09月24日(火)13時20分 | 編集 |
2013年9月24日(火)


9月22日(日)にTBSで、リチャード・ギア主演の映画『ジャック・サマースビー(原題:Sommersby)』を見ました。

この映画の日本での公開は1993年6月なのですが、当時20歳代後半だった私は青砥駅前の映画館で見ています。
配給会社がこの映画を売り込むためにつけた宣伝文句は、「この夏、唯一の恋愛物語」だったと思います。

そのキャッチコピーに惹かれて見に行ったわけでもないはずですが、今となってはなぜ映画館に足を運んでまで見ようと思ったのかは覚えていません。

今回20年ぶりに本作品をテレビで見たわけですが、単なる「恋愛物語」とは程遠い内容であることが分かりましたので、このブログで取り上げることにしました。

この映画はアメリカの南北戦争(1861-1865)が終結した直後のテネシー州の小さな村が舞台になっていますが、作品の下敷きとなっているのは、16世紀のフランスで実際に起きたマルタン・ゲール事件です。

マルタン・ゲール事件とは、1548年に妻や息子を置いて失踪したマルタン・ゲールが1556年に突如帰郷したのですが、やがてその人物の身元が判明して別人であることが証明され、姦通罪と詐欺罪により絞首刑に処せられたというものです。

この事件を題材として、1982年にフランスで『マルタン・ゲールの帰郷(原題:Le Retour de Martin Guerre)』という映画が作られたのですが、『ジャック・サマースビー』はそのフランス映画のリメイク版という位置づけになります。

主役のリチャード・ギアは南北戦争に出征後、戦死したと思われていたジャック・サマースビーを演じています。

死んだと思っていたジャックが突如帰郷し、困惑しながらも夫を迎え入れる美貌の妻ローレル・サマースビーを演じるのはジョディー・フォスターです。

リチャード・ギア主演映画『ジャック・サマースビー』を見た感想1 516


出征前のジャックは冷淡かつ残忍な性格で妻のローレルと心を通わすこともなく、近隣住民からも愛されていない男でした。

ところが、数年ぶりに帰郷したジャックは人格が変わっていました。

妻を深く愛する夫に変貌し、幼い息子ロブの就寝時には高尚なギリシア神話を読み聞かせる優しい父親になり、さらには村人たちに対しても友好的な態度を取るようになりました。

そういったジャックの人間性の変化に対して、妻も村人たちも当初は疑問の目を向けていましたが、人格が改善されたわけですから取り立てて不満を口にする必要はないわけですね。

ただ、妻のローレルは夫ジャックに対して決定的な違和感を抱く時がありました。
それは、セックスの最中です。

出征前のジャックは自分本位のセックスを繰り返し、ローレルの心と体を労(いたわ)ることなど一度もなかったのですが、帰郷したジャックは自己中心的なセックスではなく妻の立場を思いやるセックスを行うようになりました。

加えてローレルはフェラチオやピストンを通じて、出征前のジャックのペニスの寸法を熟知していたわけですが、帰郷後のジャックのペニスは握っても咥えても膣内に挿入されても、どうも大きさが違うのではないかという感覚を抱いていました。

この「妻ならではの違和感」は、ジャックの身元を解き明かす上での重要な要素となって行きます。

リチャード・ギア主演映画『ジャック・サマースビー』を見た感想2 252


映画の後半は、ジャックは本当にジャック・サマースビーなのかという謎解きに入って行きます。

ジャックには数年前に起こした殺人の嫌疑がかかり、殺人容疑者として逮捕されて裁判にかけられます。
そして、本当にジャックなのであれば絞首刑に処せられることが裁判長から言い渡されます。

ローレルはジャックの命を守るために「この男は本当のジャックではない」と法廷で主張します。

その根拠は「かつてジャックには愛を感じていなかったが、目の前にいるあなたには愛を抱いているからだ」と説明します。

このジョディー・フォスターのセリフの場面が、この映画の最大の見せ場ですね。

結果的にリチャード・ギアが演じる「ジャック」と名乗っていた男は、実はホレス・タウンゼント(Horace Townsend)という名前で、帰郷する前の4年間をジャックと共に牢獄で過ごした仲だったのです。

ジャックとホレスは外見が良く似ていました。
妻や村人たちが騙されるぐらい、身長や顔立ちがそっくりだったわけです。

但し、ペニスの寸法までは同じではなかったわけですね。
さらに愛撫の手順や射精までの持続時間、あるいは後戯にかける時間などは明らかに異なっていたわけです。

その事実にいち早く気づいたのは、2人の「ジャック」と何度もセックスを繰り返した妻のローレルだったわけです。

リチャード・ギア主演映画『ジャック・サマースビー』を見た感想3 449


本当のジャック・サマースビーは出所後人殺しをして、その後戦争で負った怪我が元で亡くなっていました。

ホレス・タウンゼントは友人としてジャック・サマースビーの亡骸を葬った後、ジャック・サマースビーになりすまして帰郷しジャックの妻を手に入れ、自分の娘を産ませるということをやっていたわけです。

なぜホレスが自分の素性を隠してまでジャック・サマースビーになりたかったかというと、ジャックにはホレスを上回る資産があり美貌の妻がいたからでしょうね。

ホレスとローレルとの間には間違いなく愛があり、ジャックの頃と比べると貧しい暮らしに転落しながらもローレルはこれまで味わったことのない幸福感に満たされていました。

ホレスが法廷でジャックになりすましていたことを白状すれば、「ジャックが犯した殺人」の嫌疑が解けるので、ホレスの命は助かります。

ところが、そうするとホレスには姦通罪及び詐欺罪による裁きが待ち受けます。

ローレルを騙してセックスをしていたことを認めることになるわけで、死刑にはなりませんが刑務所行きは免れないところです。

姦通罪の被害者となるローレルも、一緒に暮らしている男の素性は全く知らなかったとは言え、ジャックではないことを精神的にも肉体的にも感じていたことを法廷で証言しましたので、夫ではない男だと半ば承知していながら日々セックスを繰り返し、流れに任せて生きていた女性という評価を受けてしまうのです。

ローレルはホレスの命を助けるためにそれでも構わないと言いますが、ホレスは愛するローレルが身持ちの悪い女だという悪評が立つことを受け入れることは出来ません。

さらにはホレスの娘レイチェルの人生にとっても、父親がサマースビー家からすれば全く無関係の男ホレスであり、母に対して姦通罪を犯した男が父親であるという立場になってしまうため、ホレスが素性を明らかにすることは得策ではありません。

ホレス・タウンゼントは、ジャックであると偽り続ければ殺人犯として処刑され、ホレスであることを明かせば姦通罪と詐欺罪に問われてローレルとレイチェルに汚名を着せるという八方塞がりの状態に陥ったわけですね。

最終的にジャック(実はホレス)の下した結論は、ローレルを満足させるものではありませんでしたが、ローレルの心にはホレスが与えてくれた真実の愛がいつまでも残ることになったのでした。

映画公開時の「この夏、唯一の恋愛物語」という宣伝文句は言い得て妙だと言えますが、20歳代後半だった私には作品を深く理解する能力などなく、漠然と映画館の中で見ていただけでした。

その後、私もある程度の人生経験を積み作品の背景を理解した上で見ると、なかなか考えさせられる良質の映画でした。


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