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オードリー・ヘプバーン主演映画『ローマの休日』を見た感想
記事URL  カテゴリ | 外国映画 | 2012年09月13日(木)19時00分 | 編集 |
2012年9月13日(木)


目次
1. 不自然な原題
2. Roman Holidayの真意
3. 現代アメリカ市民と古代ローマ市民の相違
4. アメリカ市民の真実


1. 不自然な原題


9月3日(月)にNHKBSPで、オードリー・ヘプバーン主演の映画『ローマの休日(原題:Roman Holiday)』をやっていました。

1953年に公開された往年の名作であり多くの人が既に見たことがある作品だと思いますので、詳しい筋立てについては今さら私が述べる必要はありませんね。

ではなぜブログで取り上げたかというと、原題について知り得たことがあるからです。

邦題の『ローマの休日』は作品の内容からしても至極妥当な題名だと言えます。

オードリーが演じるアン王女がグレゴリー・ペックが演じるアメリカ人新聞記者のジョー・ブラッドレーと知り合い、ローマ市内観光を楽しみ最終的には恋に落ちるという構成になっていますので、映画の題名としては「ローマの休日」が相応しいですね。

しかしもしそうであれば、原題のRoman Holidayには違和感を抱きませんか?

形容詞のRomanには確かに「ローマの~」という語義があり、Roman Holidayは「ローマの休日」と訳せるわけですが、映画の内容からすると原題はHoliday in Romeの方が適当なのではないかと思うのです。

Holiday in Romeは直訳するとローマにおける休日ですね。
映画の内容は「アン王女とジョーのローマにおける休日」を描いたものになっていましたよね。

ところが実際の原題はRoman Holidayになっています。
これにはちゃんと理由があるのです。

2012年9月13日オードリー・ヘプバーン主演映画『ローマの休日』を見た感想 189

2. Roman Holidayの真意


実はRoman Holidayは成句で、他人を苦しめて得る利益という意味があります。

古代ローマ帝国の時代(紀元前27-紀元後476)において、休日に奴隷の剣闘士を戦わせて斬り合いをさせるという見世物が行われていました。

ローマ市民たちはこの見世物を娯楽として捉え、奴隷が怪我をしたり血を流す様子を見て楽しんでいたのです。

奴隷が苦しんで血を流している一方で市民はそれを楽しみにしているという風習が語源となり、Roman Holidayには「他人を苦しめて得る利益」という意味が派生したわけです。

この映画において他人を苦しめて利益を得ようとしているのはジョーです。

アメリカ新聞社のローマ支局に勤務するジョーはアン王女の無断外出という格好のネタを利用して、勤務する新聞社から巨額の報酬を得ようと画策したのでした。

ジョーは狭いアパートに一人暮らしで、日頃金欠に陥り周囲から借金をするような生活をしている人物です。

アン王女を自室に泊めた翌日も昼頃まで寝過ごして、業務として任されていた王女の記者会見の時刻に現場へ向かわなかったぐうたらな面を持つ男性です。

そんなうだつの上がらないジョーがニューヨーク本社へ栄転で戻るためには、この「アン王女事件」を大々的に報道する必要があったわけですね。

ジョーは夜のローマで半分意識不明のアン王女と偶然出会ったわけですが、貧乏なジョーにとってはカモがネギを背負ってやって来たような出来事だったわけです。


3. 現代アメリカ市民と古代ローマ市民の相違


ジョーは当初はアン王女の外出スキャンダルを報道するつもりでいました。
お金と出世とジャーナリストとしての名誉のためです。

ところがアン王女とローマ見物を共にする内にアン王女と身分の違いを超えた相思相愛の関係になり、純真無垢なお嬢様のアン王女を世間の晒し者にするような真似をしてはいけないと考えるようになります。

貧乏青年のジョーにとってはお金は喉から手が出るほど欲しいはずですし、王室関係の大スクープを入手する機会などもう二度と巡って来ないかも知れません。

それでもジョーはアン王女の立場を守ることを最優先して、自分の金銭欲や出世欲を捨て去るのです。

恐らく監督のウィリアム・ワイラーは、現代アメリカ市民と古代ローマ市民には大きな相違点があることをこの作品を通じて描きたかったのではないでしょうか。

つまりアメリカ市民は古代ローマ市民とは異なり、困難な立場にある者を苦しめてまで金銭的な欲望などを満たすつもりはないという強い主張がこの映画には盛り込まれているように感じます。

だからこそ映画の題名はHoliday in Romeではなく、Roman Holidayである必要があったのだと思います。


4. アメリカ市民の真実


この映画が1953年に公開された時点ではアメリカ国家がベトナム戦争(1960-1975)に突入するとは、一般には予想されていませんでした。

その後、結果的には「アメリカ市民」のあり方はワイラー監督が映画の中で主張しようとした理想像からはどんどんかけ離れて行くことになります。

もちろん、現代を生きるアメリカ市民の中にもジョーのような分別のある人物は数多くいることでしょう。

しかし残念ながら、政財界の実力者の中には「Roman Holiday」を実行している者がいることも事実です。

監督のウィリアム・ワイラー(1902-1981)、「本当の」脚本家のダルトン・トランボ(1905-1976)、主演のオードリー・ヘプバーン(1929-1993)、及びジョー役のグレゴリー・ペック(1916-2003)はみな故人となりました。

彼らは冥界から今のアメリカや世界の有り様を眺めているのでしょうが、どの国にも「Roman Holiday」を実行する者が存在している現状について心を痛めているのでしょうね。

私は後輩たちにHoliday in Romeは思う存分経験して欲しいですが、「Roman Holiday」を実行するような無分別な権力者にはなって欲しくないですね。


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