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マザッチョ『聖母子と聖アンナ』
記事URL  カテゴリ | その他絵画 | 2010年07月07日(水)16時03分 | 編集 |
記事のタグ: ウフィッツィ美術館
2010年7月7日


ラジオでの放送日:2009年10月30日(金)、31日(土) 
講座名:イタリア語で”聴く”ルネサンスの名画 講師:松浦弘明


第5週 初期ルネサンス様式の始まり ーマザッチョの革新ー
目次
1. 写実路線
2. 師匠マゾリーノ
3. マザッチョ的自然主義
4. 原題


第5週で取り上げるのは、マザッチョ作『聖母子と聖アンナ』です。

2010年7月7日マザッチョ『聖母子と聖アンナ』1 571


1. 写実路線


1) マリアの母


聖アンナとはマリアの母です。
つまりイエスの祖母にあたります。

マザッチョ(1401-1428)のこの作品は、アンナ→マリア→イエスという3代の姿を描いたものということになります。

マザッチョ(Masaccio)は初期ルネサンスの画風を革新した画家として知られ、正確な人物描写や合理的な空間表現を得意としました。

方向性としては、第1週で扱ったジョット・ディ・ボンドーネ(1266頃-1337)の延長線上にある画家と捉えて良いと思います。

彼の作品を評して「ジョットの再生」という表現が使われる場合もありますね。

この作品のどのあたりが現実的なのかを順に見ていきましょう。


2) マリアの両膝


まずマリアの居住まいに注目して下さい。
背筋をきちっと伸ばし、イエスの体を支えるために両脚を大きく開いています。

前回の第4週で取り上げたロレンツォ・モナコの画風と比べると、全く異なる描写になっていますよね。

次にイエスについてですが、幼子の局部を明瞭に描くことにより「人間の息子」であることを強調しようとする意図が感じられます。

さらに母子の寸法比という観点においても、極めて現実的な描写がなされています。

一方、イエスの発達した胸筋はあまりに現実離れしていると言えますけどね。

マザッチョがこの絵を描くにあたっては、実在の母子をモデルとして描いたのではないかと想像することも可能だと思います。

それほどまでに、この母子像は写実的で人間味を感じさせる仕上がりになっています。


3) 異質なアンナ


一方、マリアの上に位置するアンナに目を転じましょう。
マリアの姿から感じられるような現実性を、このアンナの表情に認めることが出来るでしょうか?

出来ませんよね。

どう見てもこのアンナからは、娘と孫を見守る温かみというものが感じられません。

主役であるマリアの引き立て役になっていると捉えるとしても、いくらなんでも表情が暗すぎますよね。

なぜこのような違いが生まれているのかと言うと、作者が異なるからなのです。
つまりマリアとイエスを描いたのはマザッチョなのですが、アンナを描いたのは別の画家なのです。


2. 師匠マゾリーノ


この絵の中のアンナを描いたのは、マゾリーノ(Masolino da Panicale)という画家です。

マゾリーノ(1383-1440頃)はマザッチョ(1401-1428)の師匠だったのではないかというのが一応の通説になっています。

但し、2人の画風は全く異なります。

マゾリーノの弟子と目(もく)されているマザッチョは、停滞していたジョット様式を蘇らせて15世紀の写実主義を先導した画家です。

一方、師匠であろうと思われているマゾリーノは、ゴシック様式の流れを継承している画家です。

この『聖母子と聖アンナ』におけるアンナの描写に見られるように、あくまでも聖人というものは非現実的に描くことが望ましいとする画風を踏襲している画家であると言えるでしょう。

いずれにせよ、この作品は2人の画家の手によって完成を見たということは間違いないようです。


3. マザッチョ的自然主義


第3章ではマザッチョが残した他の2つの作品を見ることで、その写実性を確認したいと思います。


1) アダムとイヴ


1つめは『楽園追放』と題されている作品で、フィレンツェのサンタ・マリア・デル・カルミネ聖堂の中にあるブランカッチ礼拝堂(Cappella Brancacci)の壁画です。

2010年7月7日マザッチョ『聖母子と聖アンナ』2 452

イタリア語の題名は、Adamo ed Evaと言います。

この作品に描かれたEva(イヴ)が感じている絶望は、現代を生きる私たちにも十分伝わってきますよね。

写実という技法の力によって、数千年も前の神話的世界が目の前に展開しているように感じることが出来ます。

しかも、ここに描かれているイヴの体つきは「女性」を表現し、両手の動きを通して彼女の「女性」としての精神性までも深く受け止めることが出来るようになっています。

さらに、Adamo(アダム)の両肩には哀愁が漂っていますよね。

神罰を受けてもう二度と楽園には戻れないという事実を受け止めるしかない彼らの苦悩が、巧みに表現された作品であると言えるでしょう。


2) 地に足の着いた人物描写


#1 ロレンツォ・モナコとの比較


マザッチョの写実性を確認するための2つ目の作品は、『三賢王の礼拝』です。

2010年7月7日マザッチョ『聖母子と聖アンナ』3 118

画面左側に描かれているロバや牛は実在の姿で描かれていると言えますし、右端の4頭の馬も全て自然な描写になっていますよね。

マリアとイエスは人間らしい視線と姿勢で、遠路はるばるやって来た客人を見つめています。

下掲の画像は第4週で取り上げたロレンツォ・モナコ作の『三賢王の礼拝』ですが、比べてみるとその違いがよくわかると思います。

2010年7月7日マザッチョ『聖母子と聖アンナ』4 297


ロレンツォ・モナコの作品においては、登場人物の足がほとんど描かれていませんね。
一方マザッチョの描く人物たちは、ちゃんと地に足がついているという描き方になっています。

ロレンツォ・モナコ(1370年頃-1425)とマザッチョ(1401-1428)は、生きた時代がそれほど離れているわけではありません。

にも関わらず、このような画風の違いが見て取れるのは興味深いですよね。


#2 ベルリン美術館


マザッチョの描いた『三賢王の礼拝』はベルリン美術館(美術館・博物館群)の中の「絵画館(Gemäldegalerie)」に展示されています。

das gemäldeは絵画という意味です。
die galerieは画廊という意味です。

『三賢王の礼拝』はイタリア語ではAdorazione dei Magiと言いますが、ドイツ語ではAnbetung der Königeと言います。

die Anbetungは礼拝という意味で、英語のworshipに相当します。

Königeは王という意味のder Königの複数形です。
賢王が3人いますからね。


4. 原題


『聖母子と聖アンナ』はイタリア語ではSant'Anna e la Madonna col Bambino若しくはMadonna col Bambino e sant'Annaと呼ばれています。

bambinoは赤ん坊(男児)という意味です。

この作品は1424年頃に制作されたと考えられています。
マザッチョは絵画史において巨匠と呼ばれている人物の中では最も短い生涯を送りました。

享年は27歳でした。





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