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ウィリアム・ブグロー『兄弟愛』 ボストン美術館展の感想
記事URL  カテゴリ | その他絵画 | 2010年06月07日(月)14時22分 | 編集 |
2010年6月7日


目次
1. 当選
2. ラファエロの再来
3. ナポレオン3世の時代
4. エリート画家
5. 原題


1. 当選


『まいにちスペイン語』2010年5月号の112ページに、ボストン美術館展のチケットプレゼント企画が掲載されていました。

2010年6月7日ボストン美術館展の感想4 230

番組やテキストへの意見や感想などをはがきに記入してNHK出版に送ると、抽選で20名にチケットが当たるという趣旨でした。

下掲のクロード・モネ作『ルーアン大聖堂の正面とアルバーヌ塔(夜明け)』という作品をこの目で見たいと思い、数年前の年賀はがきに必要事項を記入してポストに投函したのが5月4日(火)でした。

2010年6月7日ボストン美術館展の感想1 484


幸運にも当選者の20名の中に入ることが出来て、5月24日(月)に招待券が届きました。
選んで下さったNHK出版語学編集部の皆さんには感謝申し上げます。

早速、25日(火)に会場である森アーツセンターギャラリー(六本木ヒルズ森タワー52階)へ行って来ました。

かつて六本木ヒルズに別件で来たことはありましたが、森タワー52階のギャラリーには行ったことがありませんでした。

地下鉄日比谷線の六本木駅から直通になっているということでしたので、特に道順などを調べずに現地へと向かいました。

六本木駅の改札を出た後、会場へと誘導する標識や矢印などがあまり無かったように思いますが、割とスンナリと会場入口までたどり着くことが出来ました。


2. ラファエロの再来


全ての展示作品を実際に見た上でブログで取り上げる絵画は、ウィリアム・ブグロー作『兄弟愛』です。

2010年6月7日ボストン美術館展の感想2 441

モネの『ルーアン大聖堂』は、別の機会に取り上げます。

会場内の絵画の傍に掲示されていた説明書きにも記されていましたが、ラファエロ(1483-1520)の母子像によく似ていますよね。

青い衣装を身につけた美女は聖母マリアでしょうし、向かって右側の幼子はイエスと考えられます。
左側の黒髪の男の子は、洗礼者ヨハネを意識して描いたのだろうと思われます。

ところがこの作品の題名は『兄弟愛』となっていて、マリアとかイエスの名前は出てきません。

作者であるウィリアム・ブグロー(1825-1905)が表題に聖母子という文言をつけなかった以上、この女性をマリアと決めつけることには無理があるでしょう。

ウィリアム・ブグロー(William Bouguereau)は、なぜこの作品を「母子」ではなく「兄弟」という視点で鑑賞するように描き残したのでしょうか?


3. ナポレオン3世の時代


ウィリアム・ブグロー(1825-1905)がこの『兄弟愛』を完成させた1851年頃というのは、フランスにおいて政治的な変動があった時代でした。

1848年の2月革命により、国王ルイ・フィリップ(在位:1830年-1848年)がイギリスへ追放されました。

続く第二共和政(1848-1852)は数年で瓦解し、ナポレオン3世(在位:1852-1870)が皇帝となって第二帝政の時代が幕を開けます。

こうした社会変革が起きていた19世紀半ばには、宗教画の需要というものが以前と比べるとあまりなかったそうです。

19世紀前半の写真機の発明やチューブ入り絵の具の開発によって、宗教画及び肖像画というものに対する人々の意識が少しずつ変わっていったのです。

第1回印象派展が開催されたのは1874年なのですが、そこへ到るまでの間に宗教色の強い絵画がどちらかというと敬遠され、大自然や市井(しせい)の人々を描いた作品が望まれるような時代の空気が少しずつ形成されていったのだと思います。

絵画としての価値を高めるためには、『聖母子』よりも『兄弟愛』という題名にした方が得策であるという判断がブグローにあったのだろうと思われます。

もう少し時代が早ければ、『兄弟愛』ではなく『聖母子』という題名がついた作品だったかも知れません。


4. エリート画家


ウィリアム・ブグロー(William Bouguereau)は、典型的なエリート画家と言ってよいでしょう。

エコール・デ・ボザール(École des beaux-arts)と呼ばれる国立美術学校に学び、新進美術家に与えられる最高の賞であるローマ賞(Prix de Rome)も受賞しています。

彼はローマ賞の副賞として、公費でイタリアに留学することが認められました。

同地に数年間滞在して、ラファエロ(1483-1520)などのルネサンス絵画を研究する機会を得たのです。

後にエコール・デ・ボザールの教授に就任していますので、当時の画壇における指導的立場に位置していたのがブグローだったわけです。


5. 原題


『兄弟愛』は、フランス語ではAmour Fraternel、英語ではFraternal Loveと言います。

fraternelは形容詞で、兄弟の~、という意味です。
この関連語として、la fraternité(友愛・兄弟愛)という語がありますね。

絵画に描かれている女性は、リンク先の画像で見るよりも遥かに美人です。
足を止めて見とれてしまうほどの美女でした。

画像と実物は、これほどまでに違うのかと実感する作品です。

「有名な」絵画ではないせいか、立ち止まってじっくりと見る鑑賞者が周囲にいなかったので、数分間絵画を見続けることが出来ました。

第2章の見出しで「ラファエロの再来」という言葉を使ったのは、『小椅子の聖母』で描かれたマリアと同じぐらい美しい女性が描かれているからです。

2010年6月7日ボストン美術館展の感想3 336

ラファエロの『小椅子の聖母』は、別の機会で取り上げることにしています。





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